ネット無料物件はもはや当たり前?

マーケット環境の変化を見逃すな

商戦期がスタートします。今年の入居促進・空室対策はどんな変化が起こっているのでしょうか?いつもと同じ商戦期を迎えようとする人と、全く新しい時代を感じる人では対応が変わってきます。

今年の勝負はなにが違うのか

賃貸不動産にとって、年間売上の半分を1/4であげるといわれる1-3月。
準備は万端でしょうか?
魅力的な物件の仕入れは、これまで管理部門の地道なオーナー開拓と、物件の付加価値提案によって差が出ているかもしれません。
反響獲得の鍵となる写真については、オフシーズンにどれだけ写真の質と量にこだわって仲介各店舗が汗を流したかの成果が問われます。
では、新年はこれまでとなにが違うのでしょうか。
いまと同じ戦いが始まるのでしょうか。
それとも全く新しいステージに入るのでしょうか。
IT重説・民泊・民法改正とさまざまな変化が激しい賃貸業界ですが、商戦期での仕事の仕方が大きく変わるポイントは、スマートフォンの急激な浸透であり、それに対応した仲介・管理の手法の変化であります。
また設備面でいえば、ネット無料物件の増加が兆しから大きな潮流の変化となっています。

スマートフォンでの表示確認を

例年との差で大きいのは、お部屋探しがスマートフォンに移行していることです。
物件広告作成は、パソコン画面を見て不動産会社は行っていますが、入居希望者は、スマートフォンを見ています。
このギャップが危険なのです。
スマートフォンでの表示は、検索結果画面をスクロールして、物件が押されるかどうかに関わってきます。
となれば次の2つのことが大きな鍵となります。
①「検索されやすい築浅・駅近物件の獲得」
②「検索結果画面でほかの物件よりも魅力的なメイン写真をなににするか」
つまりは、仲介側の頑張りの源泉には管理側の新築物件獲得やリフォーム提案が出だしであり、それを理解した上で、写真表現をどう工夫するのかの鍵を、もう一度仲介サイドが試行錯誤する必要があります。
せっかく、管理がよいリフォームを提案したとしても、仲介の入稿担当者がスマホでの検索一覧に古びた外観を採用していては、入居希望者に訴求する事さえ出来ません。
この連携が大切になってきます。

スマートフォンでの表示確認を

DIYやカスタマイズ等新しい流れ

また、新年は、DIYやカスタマイズなど、新しいお部屋探しはさらに拡大して行く事が予測されます。
同じ家賃なら、オシャレな壁紙や照明が選べた方がいいですし、あるいは自分で棚を造ってみたい、こうしたニーズに応えていく事は、物件の入れ替わりの激しいオンシーズンに管理業務に負荷をかける事は避けましょう。

売るなら「今」というトレンド

新築物件の価格が上昇しています。
これは円安による輸入資材の高騰、人件費の高騰、そして土地価格の上昇に伴うものです。
これにひっぱられるように都心部では中古物件の価格も上昇しています。
その一方で賃貸マーケットを見ると賃料は下落傾向にあり、投資用一棟マンション等の利回りは悪化しています。
売るなら今、です。
都心の利回りの悪化は地方にとっては実は追い風となりえます。
都心で何棟か所有しているオーナーにとっては、なかなか利回りの良い物件は見当たりません。
そんな時、「地方にこんな利回りの投資物件がありますよ」とアピールすると、さっと売れてしまうこともあります。
これまで難しかった「不動産投資の出口戦略」についても、管理・仲介が膝を交えて考え、「よしこの商戦期に満室にしてから、5月に売りましょう」という作戦も考えれないわけではありません。

ネット無料物件が急増

ネットでのお部屋探しをする人が8割という環境を反映して、今年の商戦期は、ネット無料物件が急増しています。
例えば東京都中央区。
2015年12月9日に調べたところ、スーモ掲載物件の7.6%がインターネット無料物件です。
しかし、これを新築に限って調べると、20.2%がネット無料。
築古はネット代がかかり、新築はもう2割がネット無料となっていました。
スマホがパケホではなくなり、各住宅でのネット回線の需要は大きくなっています。
すでに合格発表も就職活動もサロン予約もネットの時代。
電気ガス水道に続くインフラとしてインターネットは不可欠であり、これが無料という物件は家賃が6000円ぐらい安いのと同義の生活コストの圧縮があります。
「へえ、東京はそんなことが起こっているのか」と感じた方もいるかもしれません。
しかし、その判断は間違っています。
札幌市中央区では、掲載物件の8.3%がネット無料であり、新築に至っては29.1%がネット無料。
長野県諏訪市では、掲載物件の4.5%がネット無料であり、新築に至っては100%がネット無料でした。
「築年が古いからそもそも検索されない」「スーモ等に築年の検索項目があるせいだ」「家賃を下げるほかない」という判断をする前に、もう一度自分のマーケットでなにが起こっているのかを確認すべきです。
「そんなはずはない。僕が知る限りそんな事は起こっていない」と言い切った不動産会社もいました。
そう、あなた本人が知らないだけで、昨年と今年はどんどん変化しています。
今からのリフォーム工事は、4月入居に間に合わないかもしれない。
だとすれば、ネットを無料にするといった、入居者の生活コストを下げ、賃料下落を食い止める施策も有効でしょう。

繁忙期・商戦期はこちらの都合

そもそも商戦期・繁忙期は業界サイドの都合なのです。
我々が繁盛して忙しく、我々が商売の重要な期間となっているに過ぎません。
お客様としては、こちらが忙しい等という事は関係なく、自分にふさわしい物件を選びたいのが当たり前です。
電車や旅館では「年末年始の繁忙期は料金が高く、閑散期は安くします」等という価格設定やサービス設定も見受けられますが、顧客志向とはとても言い難い。
一方で通常の倍の業務負荷となろうと、倍の人員補強をするわけにはいかないため、個々人の労務負荷は必然的に増大します。
そのためには、本部スタッフの支援も必要です。
なにしろ通常より接客時間も相談時間も限られるのですから。
人員のサポートは必要であり、できれば書類作成業務等は巻き取った方がよいでしょう。
あるいはクレーム対応等はコールセンターなどアウトソーシングの活用も有効です。
こうした状況下では、あれこれと新しい事をやるのはリスクが高く、通常時よりも慌ただしく時間が限られています。
新しい事をやりたい気持ちはぐっとこらえて、戦略はなにかに選択をして資源集中する事も重要なポイントとなるでしょう。