2005年から開始、2018年に移転が完了した九州大学の箱崎キャンパス跡地の活用に向け、福岡市その他の関係者が動き始めている。

都心近くに約43haの巨大空間

九州大学の前身である九州帝国大学が福岡市東区箱崎に設立されたのは1911(明治44)年のこと。
ところが施設の老朽化や狭隘化に加え、福岡空港の延長侵入区域であることによる騒音問題、箱崎に加え、六本松、原町などとキャンパスが分離していることによる全学教育と専攻教育、大学院教育のスムーズな連携が難しいことなどが問題となり、移転が検討され始めたのは平成に入ってから。
高層化を図ろうにも前述の空港との関係から難しいこともあり、検討開始から早い段階で移転が模索され、決まったのは福岡市西区元岡・桑原地区。
これが伊都キャンパスである。


▲新駅ができる貝塚駅とは反対、箱崎九大前駅近く、南側から見た敷地。非常に広大なものであることがお分かりいただけよう

▲大半が更地になっており、一部、保存する建物が残されている
そして空き地になった箱崎キャンパス跡地は約43ha。
東京ドームにして9個以上分の広さである。
このうち、福岡市が跡地に加えて周囲の公園や中学校なども含めた北側の約20haで区画整理事業を行い、南側の約30haではUR都市機構が開発行為を行うこととなっている。
2020年11月末までは福岡市が土地の活用について民間サウンディングを行っており、意見、提案書等の受付を経て、オンラインでのヒアリングを実施。
それを踏まえて、今後の方針などが決まっていくことになろう。

鹿児島線に新駅誕生

この開発に合わせ、JR九州は福岡市東区の鹿児島本線箱崎駅と、同千早駅の間に新駅を整備することで福岡市などと合意したと発表している。
新駅は市営地下鉄箱崎線と西鉄貝塚線が接続する貝塚駅の東側が予定地。
千早駅(福岡市東区)から2.3km、箱崎駅(同)から1.7kmの場所である。
JR九州と市によると、新駅はJR線の踏切を廃止して設置する計画。
事業費は概算で約13億円とされており、JR九州が半額、残りを九州大学とURが負担する。


▲地図作成の時点では協議中だったのだろうが、駅の予定地も記載されている

市の土地区画整理事業の計画案では市が歩行者や自転車が新駅の東西を行き来できる自由通路を整備する方針とも。
前述の箱崎キャンパス跡地の再開発は都市計画道路整備が2022年、区画整理が2024年完成とされており、駅はそれらとスケジュールを合わせ、2025年の開業を目指すという。
都心近くの大規模な土地だけにどのような開発になるかは気になるところだが、現時点では非常に抽象的な表現が多く、漠然としている。
既存の貝塚公園の再整備、新たに箱崎中央公園を整備すること、一部残した近代建築を活用するゾーンが生まれることは明らかだが、それ以外の「開発行為」が主に何を指すのか。
用途地域を一定規模の店舗、業務、住宅等の併存が可能として第二種住居地域へ変更してあることから、住宅だけではない開発が行われることは間違いない。
また、高さの制限があることからタワー林立にはなりにくいはず。
サウンディングの結果なども含め、2021年以降に具体化してくるはずである。
動向に注目しておきたい。

※不動産投資と収益物件の情報サイト建美家より引用