国土交通省は8月30日に「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度ガイドライン」を改訂。
既存住宅における省エネ性能の表示に、設備や建具ごとに記載する「省エネ部位ラベル(以下、部位ラベル)を新たに追加した。
貸主や販売主といった事業者は、新築に加え、既存物件においてもラベル表示をする対応が求められる。
法律上は努力義務
国交省は既存の住宅に対しても、省エネ性能表示の普及を推し進める。
同ガイドラインの改訂点の一つは、部位ラベルを定義した点だ。
既存物件も省エネ性能表示の対象となる。
2023年9月に公表された、改訂前の同ガイドラインにおいては、販売主や貸主は、24年4月以降、建築確認申請を行なったすべての建築物に、省エネ表示ラベル(以下、省エネラベル)の発行・表示を行うことを努力義務と明示した。
既存物件についても建築物省エネ法上、省エネ性能を表示することは努力義務とされている。
ただ、今回の告示に従ったラベル表示についてが、「望ましい」とする。
改訂で新設された部位ラベルについては、既存住宅のうち、住宅全体の省エネ性能を把握できない物件を対象とした制度だ。
省エネ性能の向上に資する部位として設備や建具などの性能がわかるよう所定のラベルを表示する。(図1参照)
国交省住宅局参事官付の担当者は「国として、新築か既築かにかかわらず、消費者に省エネ性能が伝わるようにしていくことが重要だと考えている」と話す。
※国土交通省公表資料を基に全国賃貸住宅新聞で作成
マニュアルも準備
部位ラベルにおいても、事業者が発行と表示に主体的な責任を負っている点は変わらない。
事業者は、賃貸住宅であれば、貸主のオーナーやサブリース会社となる。
発行については、部位ラベルの発行システムは事業者が必要な情報を入力する自己評価も可能。
ラベルのデータを発行したら、募集の際に、物件のチラシやポータルサイト上で表示されるよう、データを管理会社・仲介会社に提供する必要がある。
部位ラベルでは、表示事項が14項目ある。
重点を置くのが「窓」と「給湯器」の二つ。
副次的な項目として「外壁」「玄関ドア」「節湯水栓」「高断熱浴槽」「空調設備」「太陽光発電設備」「太陽熱利用」の7項目を挙げる。
表示する事項は、対象部位の有無や仕様、製品の種類となる。
9月以降に、部位ラベル発行システムと並行してマニュアルも策定する予定だ。
どういった情報を基に、システムに入力すればいいのかなど、専門的な建物の知識がなくとも、システムへの入力ができるようにしていく。
「個人オーナーが部位ラベルを発行するのは、ハードルが高いとも感じている。管理会社が発行業務を受託し、代行するのが現実的なのでは」
部位ラベル表示については、不動産ポータルサイト各社に協力を求めている。
国は、部位ラベルのデータが大手不動産ポータルサイトで表示できるように、意見交換をしているところだという。
補助制度と連携も
国交省は、既存物件の省エネラベル、部位ラベルを広めていくための施策を検討する。
その一つが補助制度との連携だ。
環境省は窓、経済産業省は給湯器の性能を向上させる改修工事に補助金を出している。
担当者は「省エネに関する補助事業を管轄する省庁とも調整し、補助を受けた案件でラベルを発行するようにしていきたい」とコメントした。