賃貸借契約の電子化が全面解禁されてから、2025年5月で3年が経過した。
管理会社が主導権を握ることで契約の電子化を進める事例が挙がる。
これらの管理会社は、オーナーとマスターリース契約や貸主代理契約の締結をすることにより、電子契約の実施率を高める。
入居者との契約書類の取り交わしにかかる業務負担軽減を狙い、25年内の電子契約導入を目指す管理会社もある。


社会実験に参加 転貸物件で導入

賃貸借契約書の電子交付が認められた22年5月から、3年が経過した。
東京都渋谷区の不動産会社は、マスターリース物件の新規契約においてほぼ100%を電子化している。
賃貸仲介はグループ会社で行う。
電子契約の全面解禁に先立ち、国土交通省は19年より電子書面交付の社会実験を実施。
同社は同実験に参加し、21年2月から電子契約を導入した。
マスターリース物件、もしくは管理物件を対象に、個人契約の場合に電子契約を活用している。
自社開発した電子契約ツールで電子契約を行う。
オンラインで重要事項説明書(重説)を行った後、電子署名のページに遷移するリンクが借主にメールで送付される。
電子契約の導入においてハードルの一つとなるのは、契約形式を紙の契約書から電子に切り替えることに対して、オーナーの理解を得ることだ。
それを、同社が貸主になるマスターリースで解消し、実施率を上げる。
管理戸数約2万7360戸のうち、56.3%がマスターリース契約だ。
マスターリース物件における電子契約の実施率は99.9%と、入居希望者から要望がない限り電子契約で対応する。
マスターリースでは同社がオーナーの承諾を得る必要がなく、導入を推進することができる。
一方で、一般管理物件では電子契約の実施率を高めることにハードルの高さを感じている。
賃貸管理を行う会社では、マスターリースを行わずすべて一般管理にて受託している。
同社における自社付け件数(非開示)のうち、電子契約の実施数は少数だという。
同社担当者は「マスターリース契約を結ぶなどの対応で、電子契約の普及を推進できる。管理会社の電子契約に対する知識の向上も不可欠だ」と話す。


スムーズな浸透 貸主代理が奏功

マスターリース以外でも、オーナーから管理を受託する際に貸主代理契約を盛り込むことで、円滑に電子契約を導入した事例もある。
約1万8000戸を管理する長崎市の不動産会社は、貸主代理契約を結び、賃貸仲介時に必要なオーナーの署名・押印を、同社が代わりに実施。
フローが簡略化したことで、導入後間もなく自社付けの約80%を電子契約で行った。
同社が電子契約を導入したのは24年2月。
活用する電子契約ツールはイタンジが提供する「電子契約くん」だ。
電子申し込みでも同社提供のツールを利用していたため、電子契約もイタンジを選んだ。
電子契約は管理物件への入居かつ、借主が個人の場合を対象とする。
そのうち、電子契約は平均80%ほど実施している。
「当社は元々管理受託の際に、管理における業務全般をスムーズにするために、貸主代理契約を結んでいる。借主との賃貸借契約などの業務を当社が代理で行うことについて、オーナーからあらかじめ承諾を得る。それにより、オーナー1人1人に説明業務などを行うことなく、電子契約へ切り替えられた」


契約条文を精査中 25年内の運用目標

管理戸数約5000戸の神奈川県大和市の不動産会社は、25年内での電子契約の導入に向けて準備を進める。
契約書類の取り交わしにかかる郵送などの業務負担を軽減する狙いだ。
GMOグローバルサイン・ホールディングスが提供する電子署名システム『GM0サイン」を利用予定。
活用中の基幹システムとの連携しやすさで選定した。
電子契約の開始に備え、従来使ってきた紙の契約書の条文を精査し、重複した箇所をそぎ落とす作業を行なっている。
「契約書を電子化したい際に、顧客が画面をスクロールする量を減らし、煩雑な印象を与えてしまわないようにしたい」
同社では、更新契約時に契約書面を郵送した際、顧客から返送がないために促進する作業などが発生している。
電子化によりそれらの作業時間を軽減したい考えだ。
25年中に運用体制を構築し、26年1月以降の繁忙期での本格始動を目指す。

※全国賃貸住宅新聞より引用