ビッグバンしのぐオフィス需要ホテル投資額は全セクターの64%に
再開発を促す政策「天神ビッグバン」などで大型ビルの竣工が相次ぐ福岡。2024〜26年のわずか3年間で賃貸オフィスストックの約1割に相当する床が新たに供給されるものの、市場は好調に推移している。賃貸水準はエリア全体で上昇傾向が続く。ホテルの売買や開発も活発だ。大型取引があり、県内の事業用不動産投資額に占めるホテルセクターの割合は64%に達した。
築40年超の老朽化したビルが立ち並ぶ天神エリアの風景は、ここ数年で急速に変化している。
2015年に始まった福岡市の再開発促進施策「天神ビッグバン」により、容積率緩和などのインセンティブを受けた大型ビルの竣工がピークを迎えているからだ。
メインストリートである明治通り沿いには、24年末から25年にかけて、4棟の大型オフィスビルやオフィスを含む複合ビルが次々と誕生した。
住友生命保険と福岡地所が手がけた天神住友生命FJビジネスセンター、ヒューリックが開発したヒューリックスクエア福岡天神、日本生命保険と積水ハウスが建設した天神ブリッククロス、そして西日本鉄道が開発し、福岡でトップレントを誇るワン・フクオカ・ビルディング(ワンビル)だ。
天神エリアに加え、博多エリアなども含めた市中心部では、24年に約2万9000坪、25年には約1万8000坪のオフィス床が供給された。
26年には天神1丁目の天神1-7計画と天神ビジネスセンター2期計画、博多駅前3丁目の西日本シティビルなどが竣工し、約2万9000坪の供給となる。
この3年間の供給量は、市中心部の賃貸オフィスストックの約1割に相当する。
短期間での大量供給には、オフィス市況の悪化を懸念する声が強かった。
しかし蓋を開けてみれば、ヒューリックスクエア福岡天神はほぼ満室、ワンビルと天神住友生命FJビジネスセンターは8〜9割、天神ブリッククロスは7〜8割ほどと、おおむね順調に稼働している。
福岡の玄関口に建築費高騰の波
三鬼商事によると、25年11月時点の福岡ビジネス地区の空室率は4.87%で、直近1年間はほぼ横ばいに推移している。
CBREの調査でも、25年9月時点の空室率は4.0%と、24年9月比で0.2ポイントの上昇にとどまった。
賃料水準はエリア全体で上昇傾向にある。
CBREによると、想定成約賃料は8四半期連続で値上がりしており、上昇傾向は今後も続くと予想する。
「人員の獲得などを理由に、新築ビルを中心に設備グレードの高いビルを選ぶ前向きな移転が増えている。既存ビルにもエリア外からの移転や増床ニーズが強く、二次空室はあまり生じていない。新築ビルの多くが従来の水準を上回る賃料を実現しており、既存ビルの賃料の引き上げにもつながっている」とCBRE福岡支店の大野洋照支店長は話す。
好調な市況の中で、関係者が気をもむのは博多駅周辺の再開発の動きだ。
博多エリアでは19年から、天神ビッグバンと同様の施策「博多コネクティッド」が動き出したものの、駅前の建て替えはまだこれからだ。
【売買】計1530室のホテル特化型ファンドを組成、サムティHD
2025年7月にファンド組成が発表された不動産デベロッパーのサムティホールディングス(以下サムティHD)のホテル特化型プライベート不動産ファンドEastgate-Samty Hospitality Fund I LP。
複数の国内投資家からのキャピタルコミットメントを確保し、サムティHDが目指す「開発から運用・出口までを一気通貫で提供するアコモデーションデベロッパー」への戦略転換において、重要なマイルストーンと位置付けられている本ファンドの資産ポートフォリオが日経不動産マーケット情報の調査で明らかになった。
本ファンドの対象となる資産ポートフォリオは、東京・名古屋・京都・福岡・広島・長崎に立地する10棟、総計1530室の宿泊特化型ホテルで構成されており、いずれも稼働率85%以上、安定したキャッシュフローと高収益性を有する資産とされている。
都内ではエスペリアイン日本橋箱崎とセンターホテル東京の2物件を組み入れた。
エスペリアイン日本橋箱崎は、地下鉄水天宮前駅から徒歩5分の清洲橋通り沿いにある。
首都高速道路の浜町インターチェンジや東京シティエアターミナル(T-CAT)に近い。
地上11階建て、延べ床面積2369㎡の規模で、サムティが18年に開発した。
客室数は114。
センターホテル東京は地下鉄茅場町駅から徒歩3分、日本橋駅からは徒歩4分の場所にある。
地上8階地下1階建て、延べ床面積2207㎡、客室数108の規模で、1978年に竣工した。
1階にはセブンイレブンの店舗が入居している。
最も多くの客室数を有するのはエスペリアホテル博多で、JR・地下鉄博多駅から徒歩5分の場所に立つ。
地上14階建て、延べ床面積6331㎡、客室数287の規模で、2018年3月に竣工した。
サムティが16年に土地を取得し、開発を手がけた後、18年8月に大和証券グループ本社の子会社で投資業務を手がける大和PIパートナーズなどが出資するSPCである合同会社博多ホテルマネジメントに譲渡された経緯がある。
ファンド運用は、運用資産7000億円を超える総合不動産運用会社であるEastGate GroupとサムティHDによる共同GP(General Partner)体制の下に実行され、総エクイティ額は約170億円の規模となっている。

福岡エリアの住宅賃料調査(2025年第3四半期)
福岡市中心部では前期同様、多くの企業や人の流入が続いている。
市内すべての区で人口の流入超過も継続中で、今後も人口および世帯数の増加が続くものと予想される。
2025年第3四半期はすべての面積帯で募集賃料が過去最高となった。
40㎡帯は前年同期比12.8%、25㎡帯と55㎡帯も同8.0%と著しく上昇している。
稼働率も他都市と比較して高い水準を維持しており、19年以降で最高の稼働率を記録している。
今後も賃料は高水準で推移していく見通しとなっている。



