準備 売る前に、買う前に決めておくこと

不動産は人が一生の間に買うもののなかで最も高い買い物であるといわれています。
また、不動産の売り買いには、法律や税金、登記などさまざまな分野が関係しますが、いずれも日常の生活ではなじみのないものばかりです。ここでは、不動産を売り買いする前にどのようなことを調べ、決めておけば良いかについて大切なポイントをあげてみました。

1.売りたいときに検討する事

まず、不動産を売りたい場合にどのようなことを調べておけば良いか、また、それらを検討するにあたっての注意点について説明します。

(1)売出し価格をいくらにするか
他の商品と比べた不動産の大きな特徴には、世の中に2つと同じ物がないという点があげられます。例えば、同じ棟のマンションでも階数や向きなどによって価格が異なるのが通常です。このため、売出価格をいくらにするかは不動産を売却するにあたっての重要な要素となります。
概して売主側は、強気(取引相場よりも高い)の値付けをしがちですが、買主側もそのときに売り出している他の不動産と比較したり、過去の成約事例などを参考にして購入価格を検討するため、売出価格が取引相場よりも高すぎると、買主側に敬遠されてしまい、売却に時間がかかってしまうことになります。

(2)売却スケジュールをどう立てるか
売出価格や条件が決まると、不動産を売り出すことになります。この情報を入手した買主が不動産の状況等を確認し価格交渉および契約スケジュールの調整と進んでいきます。契約後も、買主が住宅ローンを組む場合は金融機関に融資申込みの手続きをとることになりますし、隣地との境界が確定していない場合は立会いを求めて測量をすることが必要となる場合があります。さらに、売買代金の支払いや各種費用の清算と引渡し、登記と続いていくことになります。したがって、売却活動に入ってから、契約が成立して引渡しが完了するまでには数ヶ月を要するのが一般的です。
このため、売却代金を他の支払いに充てる計画がある人、他の住宅に住み換えの計画がある人、子供の学校の関係などで引越し時期に制約がある人などは、どのタイミングで売り出すのか、売却スケジュールをどう立てるかは重要な問題です。

(3)税金等の諸経費をどう見積もるか
不動産の売却には、仲介手数料・引越費用・測量費用・契約書の印紙代などの経費が生じます。このような諸経費としてどのくらいの金額が必要になるのかあらかじめ見積もっておくことが重要です。売却により利益が発生する場合は、それに伴う税金(所得税・住民税等)についても計算しておくことが必要です。
諸経費ではありませんが、住宅ローンが残っている場合は、その残額についても把握しておくことが必要です。住宅ローンを借りているため不動産に抵当権などが設定されている場合、買主にその不動産を引き渡すまで(または引越しと同時)に、借入金を返済して抵当権を抹消しなければなりません。どのタイミングでどのように抹消するかについて、融資を受けている金融機関等と事前に打ち合わせをしておくことが必要です。
また、借地権付建物を売却する場合は、原則として地主(土地所有権者)の承諾が必要となります。その場合、譲渡承諾料や名義変更料等の名目で金銭の支払いを求められる場合もありますので、売却活動に入る前に地主と打ち合わせをしておくことが必要です。
これら売却時に必要とされる諸経費を把握すれば、売却による収入金額のうちから、最終的にいくら手元に残るのかが分かります。

(4)売却物件の対象をどう定めるか
売買契約が締結されると、売主は引渡しまでの間に家具や食器などを運び出し、建物は空き家の状態で売主に引き渡すのが通常です。他方で、建物内に備え付けてあるエアコン、照明器具、作り付けの家具、戸建て住宅の場合は庭に設置した物置や植木などがある場合には、すべてを売却対象物に含むのか、その一部なのか売主買主間で認識が異なることもありますので、事前に明確にしておくことが必要です。また、床や壁など建物に破損や修繕を要する部分がある場合は、売主側で補修して引き渡すのか、現状のままで引き渡すのか契約までに決めておくことが必要です。これらがあいまいだと、後からトラブルに発展することがあります。

(5)土地の境界ははっきりしているか
土地の取引で生じるトラブルの多くに境界に関するものがあります。日常生活では特段問題は生じないものの、いざ売却するとなると隣地との境界は塀の内側なのか外側なのか、また中心なのかなど記憶がはっきりしないなどという例は結構多く見受けられます。その土地に隣接するすべての土地(道路も含まれます)の所有者と境界展について確認できてはじめて、取引する土地の形状および面積が確定します。
境界がはっきりしない土地については、売却に先立って隣地の所有者と境界を確認した上で土地家屋調査士等に依頼して地積測量図を作っておいた方が望ましいでしょう。また、特に道路との境界の確定は時間と費用がかかりますので、それらを見込んで資金計画や売却スケジュールを立てた方が良いでしょう。

2.買いたいときに検討すること

不動産の購入を考える場合にはどのようなことを検討しておけば良いか、また、それらを検討するにあたっての注意点について説明します。

(1)どのくらいの予算で探すか
不動産の購入にあたっては、どのくらいの予算で物件を探すことができるのか検討しておくことが必要です。不動産会社に物件探しを依頼するにしても、予算が定まっていないと探しようがありません。
また、予算を立てるうえでその内訳として、すべて自己資金でまかなうのか、住宅ローンを組むのか、父母や祖父母などからの資金援助が見込めるかなどについても確認しておくことが必要です。
特に、住宅ローンについては現在の収入でいくらまで融資が受けられるのか、大まかな金額を捉えておくことが重要です。また、融資が受けられたとしても、その返済が月々どのくらいになるのか、その返済をしながら暮らしていくのに問題はないかについてもあらかじめ検討しておくことが重要です。

(2)資金計画
不動産の購入には、本体価格のほかに付随する費用が必要となります。購入形態や条件によって異なりますが、主な付随費用としては仲介手数料、登記費用、契約印紙代、固定資産税等の清算金、不動産取得税、融資保証料、火災保険料、修繕積立一時金、引越費用などがあります。これらの付随費用を対象としたローンやこれらを含めて融資する住宅ローンも見受けられますが、基本的にはこれらの費用は現金による支払いが一般的ですので、資金計画に入れておく必要があります。

(3)どの地域・種別で探すか
どのエリアで探すかもあらかじめ決めておかなければならない事項です。購入活動を続けていくうちに、希望のエリアと希望の予算では、満足いく物件を見つけることができない場合は、もっと郊外に希望エリアを拡大するなど、活動の過程において変更が必要となることもあります。鉄道の沿線や駅、駅からの距離などある程度希望の地域を広く定めておくことも必要になるかもしれません。
また、戸建住宅かマンションか、新築物件か中古物件かなどについてもあらかじめ検討しておくことが必要です。それぞれに一長一短がありますので、特徴を考慮して家族で話し合い、検討しておくことが必要でしょう。

(4)どのくらいの広さ・間取りで探すか
どのくらいの広さ・間取りの物件を探すかもあらかじめ決めておかなければならない重要な事項です。また、方位や階高(マンションの場合)についても、こだわりがある場合は条件を決めておくべきでしょう。駅からの距離、建物の広さ、築年数、方位、マンションの場合は階数など、さまざまな要因のなかで優先順位や譲れない部分などを整理しておくと、物件探しがスムーズに進むようです。
リフォームを検討する場合には費用や構造上のリフォームの可否のみならず、マンションの管理規約等でリフォームが制限されていないか確認しておくことが必要です。