1.配偶者の税額軽減

配偶者が遺産を相続した場合は、これからの生活資金や夫婦で協力して財産を築き上げたこと等が考慮され、配偶者にだけ認められた特例があります。

1.内容

配偶者が実際に取得した財産額が、下記のいずれか高い金額までは、相続税がかかりません。

【ア】1億6,000万円 【イ】配偶者の法定相続分

例えば配偶者の法定相続分が3億円の場合、配偶者が取得する財産が3億円までは相続税がかかりません。法定相続税が8,000万円の場合であれば、1億6,000万円までは相続税がかかりません。

2.配偶者の範囲

内縁関係の方や愛人は対象とならず、婚姻届を提出し法的に夫婦である場合が対象となります。

3.特例の制限

この特例を適用するためには、相続税の申告期限までに、遺産分割協議がまとまっている必要があります。ただし、遺産分割がまとまらない場合でも、一定の届出を提出することでその適用を受けることは可能です。

2.未成年者控除

被相続人が幼い子供を遺して亡くなった場合、その子が成人に達するまでに必要となる養育費や教育費のことを考慮して、一定金額をその未成年者の相続税額から控除することにしています。

1.控除が受けられる人

相続・遺贈で財産を取得した時に日本国内に住所がある人(日本国内に住所がない場合でも日本国籍を有している人で、被相続人または相続人が、5年以内に日本国内に住所がある場合等も対象になります)で、20歳未満である法定相続人(法定相続人でない、孫に遺贈した場合には適用はありません)。

2.控除額の計算方法

10万円×(20歳-相続時の年齢)
※()内の年数の計算の結果:1年未満の期間があるときは、切り上げて計算します。例えば、年齢が15歳9ヶ月の人なら、4年3ヶ月になりますが、切り上げにより、5年となります。

3.障害者控除

相続人の中に障害者がいる場合には、生活を支えていた被相続人が亡くなったことで、今後の障害者の生活保障の点から一定金額をその障害者の相続税額から控除することにしています。

1.控除が受けられる人

相続・遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所がある障害のある人で、85歳未満である法定相続人(法定相続人でない、孫に遺贈した場合には適用はありません)。

2.控除額の計算方法

10万円×(85歳-相続時の年齢)
※未成年者控除と同様で、()内の年数の計算の結果、1年未満の期間があるときは、切り上げて計算します。
※特別障害者は20万円となります。

4.贈与税額控除

相続税を計算する場合に、被相続人が亡くなる前の3年間に贈与を受けた財産や相続時精算課税制度を適用した財産を相続財産に加算して計算します。
しかし、すでに贈与税を支払っている場合には相続税との二重課税となります。このことに配慮して、相続税の計算上加算された財産に対する贈与税を相続税から控除することとしています。

5.外国税額控除

海外に所在する財産を相続した場合、その財産についてはその国の相続税に相当する税が課税されることがあります。このような場合でも日本の相続税が課税されるので、国際的な二重課税を考慮して、その国で支払った税額を日本の相続税から控除することとしています。

6.相次相続控除

親の相続から数年をおいて子の相続が開始する場合等では、相続した財産に対し短期間のうちに相続税が2回課税されることになります。このような現象は、同一財産に対する二重課税とも考えられます。
そこで、前回の相続(第1次相続)から今回の相続(第2次相続)までの間が10年以内の場合は、「相次相続控除」によって一定の税負担の緩和が行われます。

7.相続税額の加算(2割加算)

相続・遺贈で財産を取得した人が次の人以外の場合には、算出された相続税額にその2割の金額を加算することにしています。
1.被相続人の配偶者
2.被相続人の一親等の血族(父母・子、代襲相続人を含む。)
遺言で「兄弟間の財産整理」、「孫への一世代飛ばした相続」を実施した場合には、この規定が適用されますので、注意が必要です。

安心 相続相談所ほか編(2014)「相続の不安をなくす生前対策とその進め方」小谷野公認会計士事務所監修、日本法令.より引用