大手ポータルサイトでは、ペット飼育可能物件(以下、ペット可物件)の掲載件数が5年で倍増。
供給数が増えているものの、入居者への意識調査では「ペットを飼いたい」という声が5割を超え、まだ需要が見込める。
ペット可物件のトレンドとして運営事業者は「猫」と「多頭飼い」を挙げる。
5年で掲載2倍
不動産ポータルサイト(以下、ポータル)の「SUUMO(スーモ)」を運営するリクルートによると、SUUMOでのペット相談可能物件の掲載件数は2021年以降右肩上がりとなっている。
全体の掲載件数のうちペット相談可能物件が占める割合は、19年1月1日時点では10%だったが、24年1月1日には18%を占めるまでに高まった。
賃貸住宅においては、21年に同社が行った調査で、居住者のうちペット飼育者は15.6%にとどまった。
賃貸居住者のうち約57%はペットを飼いたいと回答しており、賃貸住宅に居住しながら、ペットを飼育したい層が回答者のうち半数以上いることがわかった。
ペット可物件専門のポータル「ペットホームウェブ」を運営するPassageでも、アットホームから提供されたペット可物件の掲載件数は5年間で約2倍に増加した。
反響数も22年1〜3月の繁忙期から伸びた。
体感として23年の同時期は前年比1.5倍になり、反響数は増え続けているという。
特に反響が多いのは、東京都内。
反響数の上位30位以内に23区すべてが入っているという。
Passageの担当者は「猫飼育可能物件を耳にする機会が増えた。猫カフェが全国的に広がるにつれ、世間の猫への注目も集まり、賃貸住宅でも猫を飼育できるほうがリーシングしやすいという認識が広まったのでは」と話す。
駅徒歩25分も満室
ペット共生型賃貸を開発・建築するアゼリアホームでも、猫飼育可能物件の需要の高まりを感じているという。
同社は、東京都と神奈川県でペット共生型木造アパートを22年に開始し、累計14棟103戸を建築した。
そのうち12棟96戸が猫共生型賃貸だ。
最寄り駅から徒歩25分という条件や、繁忙期以外の竣工であっても、完工後平均1ヶ月程度で満室になっている。
エリア相場より家賃を6000〜1万円上乗せできるといったメリットがある。
同社の担当者は「アフターコロナになり、出社する機会が増え、ペットが1匹で過ごす時間が増えるため、寂しさを感じるのではないかと思った入居者から2匹目の相談を受けることが増えた」と話す。
※リクルート発表資料を基に全国賃貸住宅新聞で作成
管理重視の傾向
ペット可物件専門の管理会社、WAG SPACEの担当者も、多頭飼育の需要が増えいていると時間する。
「犬が減り、猫の飼育頭数が増えた時期もあったが、トータル的に見るとやはり犬の需要が高い。特に最近は、多頭飼育者が増えて、物件を探す顧客も複数頭飼える物件を条件として挙げることが増えた」と話す。
顧客の部屋探しのポイントは設備よりも管理面にあるとみる。
実際、入居者からの設備面での希望は少ないが、入居後のトラブルを回避するため管理がしっかりしていれば家賃が多少高くても選ばれる傾向にある。
相場家賃より2割高くても成約したケースもあるという。
同社ではトラブル対策のため、ほかの入居者の飼育状況を把握。
また、ペットを飼育していなくてもペットが好きな人のみ申し込みを受けるなど、もともとペットに対する受容度が高い層が入居するように調整する。