
2026年度春の社宅依頼は物件不足から全体的に早まりつつある傾向だ。
企業の中には、物件確保を優先し、社宅代行会社に申し込み判断を委ねるケースも出ている。
IT企業が都内への人材配置を増やす動きもあり、都心部における社宅需要と物件供給のギャップが広がる。
退去前に内見
社宅代行で年間約9万件の新規契約を行うリロケーション・ジャパンでは、依頼受け付けや成約のピークが25年同期に比べ1週間から10日前倒しになっている。
2月前半から依頼が増え始め、2月中に部屋を決めたいという要望が出ているという。
1〜2月末までの成約件数は前年同期比で110%。
ただし、これは新規顧客を獲得した点が大きく、既存顧客だけで見ると1〜2%増になる。
テレワークを縮小させ、出社回帰する法人が増えたことが、依頼増加につながった。
特に、業績の好調なIT系企業において、新規事業にあたっての東京本社への異動が増えている。
担当者は「3月に入ると物件がなくなるうえ、引っ越し費用が上がるということを法人もわかっている。4月の異動であっても先に物件を押さえるため早期に動くようになった」と話す。
物件の取り合いになっていることから、内見せずに申し込みを入れるほか、退去申し込みがあった時点で前の住人が入居中の状態で内見をする事例もあるという。
一方で、社宅の確保が困難になっていることから、法人も対応を柔軟にしている。
従来は異動の際は4月1日着任としていたが、これを4月中に緩和。
3月中に部屋探しをすることもあり、結果として依頼時期が以前より分散しているという。
成約賃料は全国平均で前年比3%上昇と、全国的に上がる傾向にある。
特に東京23区とさいたま市が顕著で、都内で4%、さいたま市で6%上がった。
都内の賃料が高騰している影響から、通勤のアクセスが良く、賃料が安いさいたま市への流入が増えたためだ。
伸び率は高いものの、都内と比較して家賃が安いため、依然として需要が高いという。
1月に辞令前倒し
東京、横浜、名古屋、大阪の4拠点で年間6171件の社宅の依頼を受ける三和アイシスでも、前倒しの傾向が強いという。
同社は都内では年間2400件の依頼を受けている。
依頼のピークは2月中旬から初旬に早まった。
2月の依頼件数は前年同月比72%増加し、707件だった。
4月1日の異動に合わせて3月中の引っ越しを希望するものの、物件不足を背景に、2月中の引っ越しを許容する法人が増えている。
担当者は「新型コロナウイルス禍明けの23年ごろから、東京都内に人材を集める動きが活発化している」と話す。
特にIT関連企業でその傾向が強い。
依頼数は25年度繁忙期と比較して1.5倍になった。
DX(デジタルトランスフォーメーション)化を推進する企業が多いことから、サービスを提供するIT関連事業全体の業績が上がり、積極的に人材確保に動いているようだ。
成約賃料は単身者向け物件で1万〜2万円ほど上がった。
家賃が高騰している市況を受け、規定の改定を行う法人も増えているが、家賃の上昇に対して改定が追いついていないという。
規定の改定が厳しい法人の場合、単身者向けで上限が8万5000円程度だ。
都心部での物件確保が難しく、通勤に60分かかるエリアでも物件を探すようになっている。
会社から近い都心部の物件を探す場合は条件を妥協し、3点ユニットバスでもやむを得ないといった声が上がった。
物件の供給量が少ないため、25年からは申し込む前の内見自体がなくなり、申し込み後に物件確認として内見する流れに変わっているという。
確認の時間を惜しんで、申し込みの判断を同社に委ねる法人もあったという。
「『社員のリクエストを聞かずに通勤60分圏内ならどこでもいい』と依頼する法人もあった」
赴任手当を増額
一方、年間4万件の社宅代行の依頼を受けるタイセイ・ハウジーでは、依頼時期、成約時期共に、25年度と比較し後ろにずれ込んだ。
成約件数は、前年同期比で25年12月は98%、26年1月は104%、2月が103%、3月は24日までで113%と、4月が近づくにつれ増加する傾向にあった。
25年度の成約は2〜3月がピークだったが、26年度は2月下旬から3月初旬と後ろ倒しになっている。
担当者は「転勤を望まない社員が増え、年々調整に苦労する企業が増加している。その結果、依頼する時期が遅くなっているのでは」と話す。
成約賃料は1都3県の場合、単身者向け物件は5000〜1万円、ファミリー向け物件は1万〜2万円上昇した。
家賃増額に対して、企業側の賃料規定の改定が追い付いていない状況だ。
これに対応すべく、企業側も従来の上限家賃の条件を緩和した。
会社の負担額を基準家賃として設定し、上回った分は社員の負担とすることで、社員が物件を選定しやすくする企業が出てきた。
ほかにも赴任手当を増額することで、社員負担額に充当できるようにしている。
中には従来の2倍となる50万〜60万円を出すという会社もあったという。
県内や地方内での異動が増加。
近場での異動のほうが従業員の同意を得やすいからだ。
それに伴いエリア採用、現地採用も増加の傾向にある。
「転勤が従業員に敬遠されるようになり、会社も対応に苦慮している。社宅に対する考え方も変わった。採用や離職防止のためのツールとして使われるようになり、従業員の要望に応えてほしいという声が増えている」



