外国人留学生(以下、留学生)の賃貸需要が戻り始めた。
賃貸仲介において、新型コロナウイルス渦前を上回る成約件数を獲得した会社もある。
大学が今後も留学生の受け入れを続けていくとみて、学生向けマンションの運営を行う大手は、ビジネス拡大の余地を見いだす。
24年秋、契約20%増
学生向けマンションの開発・運営を行う不動産会社では、2024年8〜10月の秋季における留学生の成約件数が、23年同期比で20%増加。
留学生需要の高まりを感じている。
提携する大学が留学生の誘致を強化する傾向にあると感じており、それに伴い今後も留学生の賃貸ニーズは伸びていくものと捉える。
同社は5万5700戸の学生向けマンションを運営している。
そのうち留学生の入居割合は10%未満だ。
国籍は中国籍が約6割と多くを占めている。
留学生個人の賃貸仲介に加えて、大学がマンションの部屋を一定戸数借り上げ、留学生を含む学生に部屋を提供するケースも目立つという。
特に留学生は、交換留学の場合などで3カ月や半年、1年といったように滞在期間が短期の場合もあり、基本的に2年契約である一般の賃貸契約との相性が悪い。
大学はマンションを借り上げることで、住まいの提供も行えるとして留学生への訴求要素にすることができる。
短期滞在の場合は家具・家電付きであることも必須だ。
担当者は「大学や日本語学校は留学生誘致策を拡充し続けるだろう。25〜26年ごろには管理物件の10%程度は留学生が占めるだろう。」という。
立地優先の傾向
東京都内を中心に学生向けマンションの開発・運営を行う不動産会社も、留学生の取り込みに前向きな姿勢を見せる。
24年9月の留学生の成約件数は、23年同月と比較しほぼ横ばいだった。
同社は東京23区で約1万2000戸の学生向けマンションを管理する。
入居者のうち4%ほどが留学生だという。
国籍は中国や韓国、台湾など。
留学生が成約する賃貸住宅の条件の一つに「通学する大学や、日本語学校から近いこと」がある。
従来は安価な家賃帯を優先する留学生が主流であったが、ここ数年では家賃が高くなっても、立地を優先する傾向が続いている。
大学や学校から徒歩や自転車での通学圏内であることや、遠くても電車一本で向かうことができ、乗車時間は10分程度の場所で探す人が多いという。
実際には成約となった物件の多くは、東京23区内の中でもJR山手線の内側に所在する、1K・ワンルームの物件。
家賃は10万円ほどだ。
※出入国在留管理庁発表データを基に全国賃貸住宅新聞で作成
※各年12月末時点の数値、2024年のみ6月末時点の数値
来日の拡大見込む
外国人向けに家賃債務保証事業や賃貸仲介事業を展開するグローバルトラストネットワークスは、24年9月に23年同月比約700件増の約6200件の留学生の家賃債務保証契約を行った。
賃貸仲介店舗を2店舗運営し、年間で約2600件の制約を獲得する。
制約件数のうち、留学生の割合は半数ほどだ。
担当者は「中国籍の留学生が増加傾向にある。アメリカへの渡航ビザの交付が厳しくなり、それが今も続いているからだ。地理的には中国と日本は近く、家族が会いに来やすいという点で人気が高い」と話す。
留学生のみで1万3000件の家賃債務保証契約を獲得できると見込んでいる。
19年数値を上回る
出入国在留管理庁の発表によると、24年6月末時点の在留留学生数は36万8589人。
23年12月末比で8.1%増加した。
コロナ前の19年12月末時点では34万5791人であったため、そこから6.6%伸長していることになる。
20年以降のコロナ禍において、入国制限により留学生数は減少。
21年12月末には20万7830人まで落ち込んだ。
入国制限が緩和された22年には30万人超と増加基調に乗り、24年6月末にようやくコロナ前の数値を追い抜いた形だ。
文部科学省は33年までに留学生を40万人受け入れることを目標とする。
留学生の来日人数は今後も増加することが見込めるだろう。