2025年、「建物の区分所有に関する法律(以下、区分所有法)が改正される見通しだ。
議題はマンションの「二つの老い」。
24年の通常国会での審議が見込まれていたが、提出されず見送りになっていた。
改めて改正のポイントをまとめ、今後の予定を解説する。
所在不明の所有者決議 母数から除外
区分所有法は、一つの建物に複数の所有者がいるマンションや団地の管理、運営方法について定めた法律だ。
実需用の分譲マンション以外にも、投資用区分マンションや、長屋なども法の対象に含まれる。
改正案の大きなポイントは二つ。①管理の円滑化と要件の緩和、②再生の円滑化だ。
一つ目については、所在不明の所有者を集会決議の母数から除外する仕組みを創設する。
現行法では、所在不明の所有者は決議への反対者として数えられる。
これを、公的機関によっても所有者が特定できない場合は決議の母数から除外できるようにする。
管理組合の会計報告や次年度役員の選出などの普通決議、著しい効用の変更を伴わない場合の共用部分の変更に関する決議の成立要件を緩和する。
現行法では、所有者の過半数の賛成で可決となるが、これを集会出席者の過半数でも可決できるようにする。
そのほか、高齢者や障がい者の移動、施設利用に必要な共用設備の変更に関しては、現行の所有者の4分の3以上の賛成から3分の2以上に緩和する。
二つ目の再生の円滑化においても、多数決要件の緩和を改正の主軸としている。
建て替えに関する決議は現行の所有者の5分の4以上の賛成を基本としつつ、耐震性不足などの場合は4分の3以上とする。
なお、建て替え決議が承認された建物で賃貸借契約がある場合は、補償金を支払った上で同契約を終了させることができる。
当初、区分所有法の改正案は24年の通常国会で提出される予定だったが、見送られた。
25年の通常国会で提出となる見通しだ。
法務省民事局参事官室の担当者は「24年に提出されなかったのは単純に事務手続き上の都合で、内容に問題はない。できるだけ早いタイミングでの成立を目指している」とコメントした。


築40年超、10年で3倍
所有者の高齢化も問題
区分所有法の改正が求められている背景には、マンションの「二つの老い」がある。
「二つの老い」とは、建物の老朽化と、所有者の高齢化のことを指す。
24年8月30日に国土交通省が公開した資料によれば、23年末時点の築40年以上のマンションの戸数は約136万9000戸で、10年間で95万4000戸増加し約3.3倍となっている。
43年末には、463万8000戸に到達する見通しだ。
一方の所有者の高齢化。
一次取得者の死亡や相続により、区分所有者が不明になると非居住化が進む。
非居住者である所有者はマンションの管理状態への関心が低い傾向にあり、マンションの管理不全に陥る可能性も高い。
現行法では、マンションの管理組合の決議は所有者の過半数以上の賛成を必要とする項目も多く、意思を表明しない所有者が増加すれば、管理組合の意思決定ができなくなる。
マンションの老朽化対策において何も決定できないということが続けば、管理不全マンションが増加しかねない。
区分所有法の改正は喫緊の課題といえる。