4月1日に建築基準法の改正法が施行される。これにより、「4号特例」が縮小され、賃貸住宅においても建築審査に伴うコストの増加や建築期間が長期化する可能性がある。新たに規定される新2号建築物を手がける建築事業者に、どのような影響が危惧されるか話を聞いた。

「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」(以下、改正法)により、すべての建築物に対して省エネ基準への適合化が義務付けられた。
省エネ基準への適合や、省エネ化に伴い重量化する建築物に対応する構造安全性への基準への適合について審査することで、消費者が安心して住宅を整備・取得できる環境を整える。
そのために、実施されたのが今回の4号特例の見直しだ。
4号特例の4号とは、2階建て以下かつ、延べ床面積が500㎡以下の木像建築物など(集合住宅など特殊建築物は除く)の4号建築物を指す。
これらの4号建築物に対して、構造関連規定などの審査が省略される制度が4号特例だ。
今回の改正により、これまでの4号建築物のうち、2階建て、もしくは延べ床面積200㎡以下の平屋は「新3号建築物」に変更される。
新2号建築物は従来あった審査省略制度の対象外となるが、新3号建築物は従来の4号特例から引き続き一部審査を省略可能だ(図1参照)。
新2号建築物では、構造関係規定や防火避難規定など対象となる審査項目が増加。
さらには構造関係規定や省エネ関連の設計図書の提出が必要になる(表1参照)。

建築申請、駆け込みコスト2割増加

「審査機関に提出する図書の作成にかかる時間や、審査機関が確認する期間が倍ぐらいになると見込んでいる。その分、設計スタッフの手間も増え、現状受注している案件では以前と比較し、設計費用が2〜3割上がる」と、考える会社もある。

※法務省「区分所有法の見直しに関する要綱案」より全国賃貸住宅新聞で作成

新2号建築物に適合する賃貸住宅を、年間5〜10棟ほど建築している。
従来4号特例の対象だった賃貸住宅であれば、再設計も含めて申請後2週間で建築確認が下りていたが、法改正後は4週間以上かかる見込みだ。
審査内容が複雑化することで、申請内容の差し戻しが増える可能性もある。
新2号建築物の審査期間が長期化することで、そのほかの建築物での審査も影響を受け、工事が長期化すると想定する。
そのため、繁忙期に合わせて物件を完工させるには、ゆとりあるスケジュールを組む必要があるという、
例えば2階建てで4戸のアパートであれば、遅くとも8〜9月にはオーナーから建築を請け負わないと翌年の繁忙期に間に合わせることは難しいとみる。

社内で構造計算 負担増家主に説明

一方で改正法による影響をあまり感じていないとする建築事業者もいる。
ある建設会社は、実需向け住宅をメインに賃貸住宅の建築も行う。
従来から省エネ計算や、構造計算を社内で行なってきたため、すぐに対応可能だという。
担当者は「今までは、これらの計算に伴う図書は提出不要だったため、審査に必要とされる手順の確認を行なっている」と話す。
同社はテラスハウスも含めて、年に平均2棟の賃貸住宅の建築を請け負う。
1棟あたり2階建て10戸以内の物件がメインだ。
戸あたり40㎡前後で新2号建築物に該当する。
審査費用自体が値上がりし、同社の負担も増えるため、その分のコストは設計契約費に計上。
オーナーには見積もり時に説明している。

実需向け逆風か 賃貸市場へ進出も

「今回の法改正で影響があるのは、2階建ての木像戸建てを手がけていた事業者ら。建築費高騰による実需向け住宅の売れ行き不振もあり、戸建て賃貸へ一部進出する可能性がある」と不動産ポータルサイト「SUUMO(スーモ)」の担当者は話す。
SUUMOの掲載データでは戸建て賃貸の掲載比率は全体の約1.8%。
これに対して、すべての問い合わせのうち戸建て賃貸に対する割合が5〜6%と戸建て賃貸の需要が供給を上回っている。
そのため、注文住宅や建て売り住宅をメインにやってきた事業者が賃貸住宅にも事業を拡大していく可能性も一定あると担当者は考える。
ただし、戸建て賃貸も2階建ては4号特例見直しの影響を受ける。
一方で200㎡以下の平屋は、省エネ適合や構造計算が不要という今の4号特例とほぼ同じ条件が継続するので立てやすい。
「地方部を中心に省エネ性能の高くかつコンパクトな平屋賃貸は人気を博するのでは」

※全国賃貸住宅新聞より引用