4月から住宅性能表示制度がスタートし、1日以降に建築確認を申請した賃貸住宅においては、入居募集時に所定の「省エネ性能ラベル」を表示することがオーナーやサブリース会社の努力義務となった。不動産ポータルサイト(以下、ポータル)大手はシステム改修を進め、大手管理会社も制度対応の体制を整えつつある。

貸主に努力義務

4月から、建築物の住宅性能表示制度が始動した。対象となるのは、2024年4月1日以降に建築確認申請を行う新築の建築物。24年4月以降に賃貸される新築建築物に対し、所定の省エネ性能ラベルの表示を行うことを、オーナー・サブリース会社を含めた貸主の努力義務とした。対象物件の再募集時にも同ラベルの表示が求められる。
省エネ性能ラベルには、エネルギー消費性能・断熱性能・目安光熱費などを記載する。(図1参照)
同ラベルが、部屋探しを行う顧客まで届くようにするためには、努力義務を課せられたオーナーやサブリース会社だけでなく、管理会社や仲介会社の協力も不可欠だ。貸主から同ラベルデータを受け取り、ポータルや自社サイト、物件の募集図面などに表示させる必要がある。省エネ性能ラベルが表示されていないと、国土交通大臣が勧告・公表・命令の措置を講じる場合がある。
省エネ性能ラベル発行に必要な自己評価の正式プログラムは、住宅については3月4日から、非住宅については3月18日から公開された。
国土交通省が事業者向けに配布する同制度の周知用ツールへの申し込みは、1100以上の事業者から累計で6000部屋あったという。国交省住宅局の担当者は「仲介会社に直接の努力義務はないが、新築物件については売主や貸主にデータ送付についてリマインドしてもらうといった制度の趣旨を踏まえた対応をお願いしている」と話す。


概要欄への記載も

大手ポータルは、不動産会社が省エネ性能ラベルのデータを掲載できるように、システム改修を急ピッチで進めてきた。
リクルートが運営するポータル「SUUMO(スーモ)」においては、入稿時に「その他画像」のカテゴリーで同ラベルのデータを入稿すれば、個別の物件情報の画像の一つとして掲載されるようにした。現在、入稿画面に「省エネ性能ラベル」用の枠を設定する改修を行なっているところだ。
アットホームは3月27日から、同社の提供する不動産業務総合支援サイト「AT(アット)BB」の入稿用画面に、同ラベル専門の登録枠を新設。また、エネルギー消費性能、断熱性能、目安光熱費を登録項目に記載することで、消費者向けサイトや不動産業者間サイトの物件概要欄に情報が掲載できるようにした。
担当者は「不動産会社への告知としては、ATBBに省エネ性能ラベルと項目の追加においてのお知らせを出している。加えて、登録画面の省エネ性能ラベルに関わる用語のすぐ近くに、登録ルールの確認ツールも配置した。運用開始後に不動産会社が参考にできるようにしている」と語る。
LIFULL(ライフル)が運営する「LIFULL HOME’S(ホームズ)」では、3月28日より、画像入稿画面の画像種別に「省エネ性能ラベル」のカテゴリーを追加で設置。画像種別よりプルダウン方式で選び、同ラベルのデータをアップロードすると、物件情報上の「省エネ性能」という項目に表示される。
担当者は「今後、省エネ性能ラベルの表示努力義務があるサブリース系の管理会社は、新築募集時に同ラベルを業者間流通システムに掲載してくると考えられる。仲介会社は同ラベルを、画像としてポータルに入稿するだけなので手間はほぼ増えない」と話す。


「住戸ごと」が原則

省エネ性能ラベルの取り扱いにおいて、気を付けるべき点はいくつかある。一つ目に、再募集時に建物や設備の変更がなければ同じ住戸のラベルデータを表示しても問題ないという。二つ目は、同じ棟内でも、外気にさらされやすい角住戸とほかの住戸で挟まれた中住戸では、性能の評価が異なってくる可能性がある。あくまで住戸ごとに発行されたラベルを表示する必要がある。三つ目は、エアコンや給湯器などの設備交換時、ラベルを発行した時よりも省エネ性能のグレードが低い設備に変えた場合には、性能評価が下がるケースも考えられる。設計者に評価し直して再発行しなければならない。

省エネ性能ラベル取り扱いの注意点

  1. 再募集時に建物や設備に変更がなければ同じ住戸のラベルデータを表示するのは問題ない
  2. 同じ棟内でも角住戸と中住戸で住宅性能が異なるため、該当する住戸ごとにラベルを表示
  3. エアコンや給湯器安堵を、評価時より性能の低い商品に交換した場合、ラベルを再発行
※全国賃貸住宅新聞より引用