4月1日から「改正障害者差別解消法」が施行され、賃貸仲介時の対応にも影響が出てくる。
部屋探しなどをする障がい者に対して、不動産会社から理由なく配慮を拒否することが認められなくなる。

違反で罰則適用も

改正障害者差別解消法ではこれまで努力義務だった障がい者への合理的配慮の提供が義務となる。
行政機関や事業者は、障がい者から配慮を求められた場合、重すぎる負担にならない範囲で、必要かつ合理的な配慮の提供が求められる。
国土交通省は改正法の施行に先立ち、事業者の対応方針「国土交通省所管事業における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応方針」を、2023年11月に公開した。
同方針では、相手に合わせた方法での会話や対応を行うなどの、具体的な配慮などの例を記載する。
例えば、障がい者や介助者らからの意思の表明に応じて、ゆっくり話す。
手のひらに指で文字を書いて伝える手書き文字を使う。
わかりやすい表現に置き換えるなどだ。
同法を守らないことで、場合によっては罰則が科せられることもあるので注意が必要だ。
事業者が繰り返し法に反し、自主的な改善が難しい場合などに、国交省はその事業者に報告を求め、助言、指導、勧告を行う可能性がある。
また、事業者が同省から報告を求められた際、報告拒否や虚偽の報告をした場合などに過料20万円以下の罰則が設けられている。
国交省不動産・建設経済局の担当者は「対応できない場合は一方的に断らず、その理由を丁寧に説明することが重要」と話す。
個別の事例の対応に困った場合には、23年10月に内閣府が開設した障がい者差別に関する相談窓口」に相談をすることが可能だ。


内閣府が作成したリーフレット

ヒアリングを重視

障がい者の賃貸仲介に先進的に取り組む企業はどのように対応しているのか。
住宅確保要配慮者を中心に賃貸仲介を行うある会社は、障がい者から年間で約9300件の問い合わせを受ける。
同社で力を入れるのは、部屋探しの相談を受けた段階でのヒアリングだ。
ヒアリングは問い合わせを受けた後、障害のない顧客の2〜3倍ほどの時間をかけて行う。
その結果、一般の賃貸住宅ではなく、スタッフの介助を受けながら集団生活を行うグループホームや、その他障がい者施設を紹介する場合も3割ほどあるという。
同社では精神疾患、視覚障害、聴覚障害、車いすなど、障がいごとに詳しいスタッフが在籍。
提案する住宅の判断に知識を生かす。
担当者は「障がいを持つに至った経緯を聞くことは、顧客の状況を知る上で重要。障がいの進行の有無などを確認し、症状に見合った支援が受けられる住宅を紹介するケースもある」と話す。


全社員対応が目標

賃貸仲介を行う別の会社は、障がい者から年間10件以上の部屋探しの問い合わせがある。
問い合わせのうち、多くが精神疾患による障がいを持つ顧客で、相談を受ける時点で医療機関に通院しているケースが多い。
そのため、本人の事情を知る相談員らから事前に情報を集めている。
同社は障がい者や高齢者の顧客に対応するためのチーム「シルバープロジェクト」を14年に開始。
同社グループで賃貸管理を含め、五つの部署から7人が参加している。
障がい者の対応は同プロジェクトのメンバーが中心となって行い、チーム内で事例の共有を行う。
また社員に向けて、障がいを持つ入居者と、その対応で必要な配慮について周知する目的でリストを作成し、グループウェア内で共有。
月に1度情報を更新し、意識の浸透を図る。
担当者は「どの部署に問い合わせが来ても対応できるようプロジェクトメンバーはさまざまな部署をまたいでいる。最終的に全社員が対応できることを目指す」と話す。

※全国賃貸住宅新聞より引用