新型コロナウイルス禍を経て、リモートワークが広がる中、オフィスの在り方が変化している。
出社時に従業員がコミュニケーションを取りやすくする仕組みづくりが求められている。
オフィスのトレンドを知ることは、不動産会社の新たな商機にもなりそうだ。

対面の機会を確保

コロナ禍で、作業の場としてよりも、コミュニケーションを取る場としてオフィスが求められるよになってきている。
オフィス用不動産の企画、分析、調査などを手がけるザイマックス不動産総合研究所が4月に行った「大都市圏オフィス需要調査」では、平均出社率は64.3%。
テレワークと出社を組み合わせる「ハイブリッドワーク」を採用する企業が目立った。
今後のオフィス面積の意向では、「拡張したい」との回答が、「縮小したい」を3年ぶりに上回る結果となった。
有効回答社数は1537社。
同社は「今後、オフィスの価値が再定義されていく」と調査内容を分析する。
リモートワークを継続し、出社人数が減るのであれば、オフィス面積は縮小傾向に進むのが自然だ。
だが、必ずしもそうならないのは「対面でのやり取りが重要になる場合があるからだ」と話す。
中でも、新入社員教育や、新事業の企画会議などは、オンラインよりも対面でのやり取りで成果が出やすい傾向にあるとしている。

談話促す空間企画

2021年12月に既存オフィスを改修したのは分譲マンション開発事業を手がけるコスモスイニシアに西日本支社だ。
改修の主な目的は、部署を越えたコミュニケーションの活性化と、リモートワークなど新しい働き方への対応だ。
事業ごとに部署が縦割りになっていることにより、部門間の協業効果が生まれにくかった。
こういった課題を解消するため、従来の部署ごとにまとめたデスク配置から、個人の座席を決めないフリーアドレス制に変更した。
仕事の内容に合わせて場所を選べるよう、さまざまなブースを用意。
例えば「集中ブース」は、1人で集中して作業に没頭できるよう、防音壁を造り半個室にした。
また、飲み物や軽食販売ブースの正面には、話しながら執務ができる「マグネットスペース」を用意。
このブースは特に若年層から人気で、執務の途中で一息ついて社員同士で話している様子が見られているという。
実際に従業員から「以前よりもオフィス内で話しかけやすくなった」という声も上がっているようだ。
メール返信などの必須作業を行なってすぐ帰っていた販売営業担当者は、改修後、次のアポイントまでの待ち時間にいったんオフィスに戻るなど、オフィスでの滞在時間が延びているという。
一方で課題もある。
「“家でできるけれどオフィスに行こう”というマインドを醸成したい。そのためにはオフィスをつくって終わりではなく、継続した仕かけづくりが必須になってくる」と話す。
今後は社外の人の利用促進のため、従業員以外が使えるWi-Fiの導入などを検討している。
今後、オフィスの在り方はさらに多様化する様相だ。
経営層の「目指す会社像」を表現する場としての意味合いも持つようになっている。
変化に合わせた物件づくり、テナント誘致を行うことでビジネスチャンスをつかむことができそうだ。

※全国賃貸住宅新聞より引用