国土交通省は、三つの新制度を盛り込んだ「改正広域的地域活性化基盤整備法」(以下、二地域居住促進法)を11月1日に施行した。
新しい暮らし方の選択肢としてまだ一部にとどまる二地域居住に、国がお墨付きを与えた形だ。

暮らし方の選択肢 特別枠を一般化へ

二地域居住促進法で国が目指すのは、希望者が二地域居住を選択できる環境の整備だ。
二地域居住とは、都市部と地方や、地方と別の地方との二地域に生活拠点を設ける暮らし方を指す。
結果的に人口を奪い合ってしまう移住とは区別され、二地域居住は人口をシェアすることができる。
国交省国土政策局地方政策課の担当者は「これまで、特別な存在という印象を持たれてきた二地域居住だが、今回、法律で定義する暮らし方になったという点が大きな影響力を持つだろう」と語る。
二地域居住を促進していくために、「住まい」「なりわい・仕事環境」「コミュニティ」の整備を進めていく。
これらの取り組みを支援するために、同改正法では三つの制度が設置された。
一つは「市町村計画制度」だ。
市町村が二地域居住を促進したいとき、国からの支援を受けやすくした。
市町村は特定居住促進計画の作成が可能で、同計画に定めた事業を実施する場合に特定居住促進地域として法律上の特例が措置される。
例えば、住居専用地域でもコワーキング施設を開設しやすくなるなどが挙げられる。
なお、市町村が同計画を作成できるのは、都道府県が二地域居住に関わる広域的地域活性化基盤整備計画を作成した後になる。
そのため、市町村側が都道府県に基盤整備計画の作成を提案することも可能だ。
官民の連携も進める。
住まいの提供や仕事の創出、コミュニティづくりに関する取り組みを行う民間事業者を「二地域居住等支援法人とする指定制度」をつくった。
指定を行うのは、市町村長となる。
最後に、二地域居住に関わる関係者の連携を強化するための「協議会制度」だ。
市町村は、特定居住促進計画の作成に必要な協議を行う場として、都道府県、支援法人、地域住民、不動産会社などを構成員とした二地域居住協議会を組織できるようになった。


官民連携を推進 指定法人制度創設

新制度の中でも、特に二地域居住等支援法人の指定制度が不動産会社にも直接的に関係してくる。
市町村長が、二地域居住に関する取り組みやサービスを提供する不動産会社などの民間企業・NPO法人などを支援法人として指定する。
企業側の条件は法人格を持っていることのみ。
条件を満たした法人を指定するかの判断は、各市町村に委ねられる。
指定法人は、国の予算を事業資金として使用できる。
担当者は「二地域居住者の住まいは、コストを考えた際に物件の購入ではなく賃貸住宅となることが予想される。地域不動産会社にとっては、二地域居住の推進が入居者の獲得につながるという分かりやすいメリットが生まれるだろう」と語った。
国は2029年までに、支援法人の指定数600事業者を目指す。
法改正の背景には大きく四つの理由がある。
まずは人口減少と地方創生。
人手不足が深刻化するなかで、二地域に住む人材は、地方を含む各地域の関係人口として一人二役を担えるという考え方を提案する。
次に個人のウェルビーイング(心身の健康や幸福)の向上。
暮らし方や働き方の多様化に沿った新たな選択肢を提示する。
最後に、防災の観点だ。
一方の拠点で災害が発生した際の避難先として機能することを狙う。
二地域居住等促進法施行に先駆け、官民の連携促進を目的に、情報交換や事例紹介、官民のマッチングを行うコミュニティ「全国二地域居住促進官民連携プラットフォーム」が10月に開設された。
11月1日時点の民間事業者の会員数は204事業者。
このうち、約2割は住宅や不動産関連事業者が占め、業種構成比率でみると2番目に多い割合となった。

※全国賃貸住宅新聞より引用