液化石油(LP)ガス事業者が賃貸住宅の設備をオーナーに無償で貸し、その分の費用を入居者のLPガス利用料に上乗せしていた状況を変えるべく、国が動き出した。
関係者に、実際の消費者からの相談件数や、業界に与える影響を聞いた。
入居者への公正な対応が求められている。
設備費上乗せ禁止
経済産業省は、消費者が支払うLPガスの利用料が不透明な実態を是正する。
「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」について、段階的に二つの省令を改正する方針を7月24日に発表。
それぞれ、2024年度、27年度に改正法を施行する予定だ。
改正する内容の一つ目は、LPガス事業者を対象に、過大な営業行為を禁止するもの。
LPガスに関係のない設備をオーナーに無償貸与することで、LPガスの導入契約を結ぶ営業行為を取り締まる。
二つ目は、LPガス事業者が消費者に対し発行する利用料金の通知書に、料金の内訳を明確に記す。
具体的には、三部料金制といって、基本料金、使用量を表す従量料金、設備料金の三つに分けて提示させる。
この設備料金は、LPガスの利用に関わる設備である配管などを指す。
賃貸住宅の場合、家賃に含まれているものとし、計上を禁止する。
いずれも罰則規定を設け、取り締まる対象はLPガス事業者となる。
罰則が発生することを知ったうえで、管理会社やオーナー側が、過大な営業行為をあっせんするような態度は、コンプライアンスに抵触する恐れがある。
家主からも相談
「LPガスが消費者から選択されなくなってしまうことを防ぎたい」と語るのは、公益社団法人全国消費生活相談員協会(東京都中央区)エネルギー問題研究会の林弘美代表だ。
ガスボンベを各世帯に設置し、自立稼働できるLPガスは、災害時に電力供給が途絶えないことが強みだ。
林代表は「LPガスを含め、消費者にとってエネルギーの選択の幅が広いことが、生活の安全性の確保にもつながる」と話す。
同協会に寄せられたLPガスの相談件数は22年度に2140件で、一般社団法人全国LPガス協会(東京都港区)への相談件数との合計は4957件に上る。
09年に改正された特定商取引法により、LPガスの勧誘行為が取り締られたことで、相談件数は減少傾向にあるという。
しかし、特に賃貸住宅に住むLPガスの消費者が、ライフラインであるにもかかわらずエネルギーの選択ができない点と、その料金が都市ガスよりも高い傾向にあることは、消費者問題として注視されてきた。
消費者からは「近所に住む友人のガス料金より高いことに疑問を抱いた」、オーナーからは「給湯器の設備費をLPガス会社が負担するので供給替えをしないかと不動産会社から提案されたが、入居者が払うガス料金に疑問がある」などの声が全国消費生活相談員協会に寄せられている。
各相談内容を確認すると、多くは家賃がエリア相場より安く設定されている物件で発生していた。
本来、家賃で回収するべき物件の設備費を、LPガスの利用料金に説明なく上乗せしていることが、消費者からの疑問の声となって寄せられていた。