民法の改正によって、4月より成人年齢が従来の20歳から18歳に引き下げられることで、不動産業界にはどのような影響があるのか、学生が賃貸住宅に入居する場合、従来提出を求めていた親権者の同意書の対応で、会社によって意見が分かれる状況が浮かび上がってきた。

4月からの成人年齢の引き下げによって大きく変わる点は、18歳から親権者の同意書なしで契約を結べるようになること。
国民年金加入の義務付け、喫煙や飲酒、公営ギャンブルなどが認められるのは従来通り20歳からだ。
こうした状況を踏まえて、管理会社や家賃債務保証会社では18〜19歳の入居者についての規定を改定する動きが見られる。
学生向け賃貸を中心に約4万8000戸を管理する学生情報センターでは、18〜19歳入居希望者の賃貸住宅の申し込みや契約に際しては、従来通り、親権者・法定代理人の同意を得ることとしている。
「若年成人の契約能力不足を補うための保護の必要性は、実際にはある。また、賃料の支払い債務の負担はその親が行うのが通常。納得感のある契約のためにも、改正前の親権者・法定代理人を契約関係から排除するのは適当ではない」と話す。
ただし、これまでのように「親権者」や「法定代理人」という肩書きで親の同意を得ることは、改正法にはそぐわないため、肩書については検討中だ。
単に「同意者」として父または母の(あるいは双方の)同意を得たうえで、申し込みを受ける方向で動いている。
また、緊急連絡先は、従来通り父母やそのほかの保護者の連絡先とする。
管理物件約1万戸の入居のうち7割を学生が占める、のうか不動産では、18〜19歳の人が管理物件へ入居する際の契約形態が大きく変わる。
従来は、入居者が18〜19歳の場合は、契約者を本人ではなく親権者としていた。
成人年齢の引き下げに伴い、契約者を本人とする方針を固めた。
親権者の同意書などは不要だが、緊急連絡先を親権者としている。
また、家賃債務保証会社を利用するため、連帯保証人は不要だ。
「契約者は変わるが、入居者の環境自体が変わるわけではないので、業務的にも以前と大きな変化はないのではないか」と話す。
家賃債務保証会社の動きはさまざまだ。
Casaでは、成人年齢の引き下げに伴い、18歳以上の入居者については契約の際に親権者の同意書を不要とする。
「生協や不動産会社にとって親権者の同意を取ることが大変な手間となっていた。さらに養護施設などは18歳で出るケースが多いため、今まで施設長や支援団体が住まいを借りている例がほとんどだった。そういった手間や矛盾が解消されるのは大きなメリット」と話す。
全保連は、改正民法に対応するべく、20年1月から原則連帯保証人をつけない運用を開始している。
18歳以上の契約者については親権者の同意書も不要。
20歳と18歳との大差はないとの認識。
日本賃貸保証は、18歳以上の入居希望者に関しては、4月1日から受け付けの際に親権者への同意確認は行わない方針。
「誰もが差別なく住まいを得る権利を保証すること」を理念としており、連帯保証人は以前から不要だ。
今のところ、業界共通のガイドラインはない。
だが、現場も混乱を防ぐためにも、規定を明確にする必要がありそうだ。

※全国賃貸住宅新聞より引用