観光客4000万人に沸く賃貸市場
民泊関連施設整備が急務
3月30日、政府は2020年の訪日外国人観光客数の目標を2000万人から4000万人に倍増させると発表しました。
地方創生の切り札とされる観光産業は、賃貸市場にどのうような効果をもたらすのでしょうか。
訪日外国人観光客の数値目標を大幅に上方修正した背景には、民泊関連施設を推進するための追い風にしようとする政府の狙いがあります。
少子高齢化が進む日本にとってインバウンド需要の獲得は、経済成長を図るうえで見逃せないチャンスです。
そのためには観光産業の発展が不可欠ですが、交通インフラの整備や観光関係の規制の見直しなど課題は多いです。
特に大きな問題は、深刻な宿泊施設不足。
東京や大阪など、都市圏の宿泊施設の稼働率はすでに80%を超えており、ほとんど予約が取れない状態が続いています。
解決策の一つとして政府は、マンションなどの空き部屋を有料で旅行客に貸し出す民泊を推進しています。
しかし、民泊を合法的に運営するための手段は限られているため、普及には法律の整備や新たな制度の創設が必要となります。
現在、自民党が中心となって民泊関連法案の準備を進めていますが、利用者と居住者とのトラブルになった事例が多数報告されていることなどから「民泊が必要なことは間違いないが、安心・安全が前提条件。普及を急ぎ過ぎて問題が起こらないように検証が必要です。」(観光庁)と慎重な意見もあります。
仮に、新たな数値目標を達成した場合、宿泊や飲食などに使う消費額は8兆円となり、12兆円といわれている自動車産業に次ぐ大きな外貨獲得手段となります。
賃貸市場では、空室を活用した新たなビジネスを創出できるのに加え、不動産投資やリフォーム需要の開拓など、さらなる経済的効果が期待されます。
観光事業の推進に伴う民泊関連施策にかかる期待は大きいです。
大阪で初の民泊認定
大東市のマンションでとまれるが取得
大阪府は2016年4月8日、特区民泊の第一号を認定したと発表しました。
物件は大東市内に立つ1K(26㎡)のマンション。
とまれる(東京都千代田区)の運営。
同社はすでに東京都大田区で2件の認定を受けており「大田区での経験があったため、準備も申請もスムーズでした」と担当者は話しました。
大田区との違いの一つはマンションの管理規約を提出する点です。
大阪ではマンションによって管理規約で民泊が禁止されている場合があり、自治体が判断する材料として求められます。
また、大田区の物件では蒲田駅から徒歩圏内にフロントを設けていますが、大阪府では対応エリアが広範囲にわたるため当面見送られます。
代わりに清掃・リネン交換業者に本人確認や鍵の受け渡しなどの業務を依頼します。
大阪府の民泊解禁から12日間で申請、認定共にとまれるの1件のみです。
「6泊7日以上」の規定が足かせになっているのではとする声があります。
3月29日に行われた事業者向け説明会では参加者から「2、3日の利用がほとんど」との意見が挙がりました。
しかし、とまれるの担当者は「需要は予想以上にある」と話します。
アメリカやロシアからの問い合わせや、国内の家族旅行で利用したいという要望もありました。
「家族が大人数で一ヶ所に泊まれることができ、外食したくないときはキッチンを自由に使える民泊が求められているのではないか」と分析します。
大阪府は「申請そのものは少ないものの、申請希望者からの問い合わせは71件来ています。水面下で準備を進めている事業者もいるのでは」と語りました。