傷や汚れがつきにくい建築資材を活用する

原状回復の訴訟は家主にとって不利

子どもの数よりペットの数が増えたという日本。
空室対策の一環としてのペット可や、区分所有の分譲賃貸タイプはペット可が多くなりました。
ペット可物件は入居者の居住年数が長く、賃貸経営が安定するメリットがあります。
半面、原状回復等でトラブルになることが多いのも事実です。
今回は、女性のひとり住まい、ワンちゃん付きの案件です。
分譲貸の賃貸なため賃料も高く、家賃が遅れることが度々ありました。
交渉の末、滞納額が貯まる前に、任意退去となりました。
鍵の受け渡しの日、室内に入ってびっくり。
お留守番が多かったワンちゃんは、淋しかったのか、リビングのドア下の床がひどく、土を掘るようにしていたのか、フローリングが相当割り掘られていました。
その上、ドア自体もかりかりされていたのでしょう。
白いダイノックシートが下半分ほぼ削り取られ、下地の木が丸見え状態にnatいました。
飼い主の帰りを待ちわび、リビングから玄関ドアが開くのを待ちわびながら、ドアをかりかり、ドア下の床をかりかり・・・。
ペットの切ない思いにキュンとなっていまいますが、家主側はたまったもんじゃありません。
ここまでくると通常使用というわけにはいかないので、貸借人負担となります。
しかしながら金額面で折り合いがつきません。
これは賃借人側が、リフォーム代金や原状回復のガイドライン等を簡単に調べられるようになったことが一番の理由ではないでしょうか。
今はインターネット等で、いくらでも情報を得ることができます。
また無料で相談できる法テラスもあります。
万が一原状回復の案件が訴訟となった場合、圧倒的に賃借人保護の結果になってしまうことが今の裁判所のスタンダードです。
こうなると家主側は、絶対に費用倒れとなります。
なんとか話し合いで金額を確定させ、裁判とならないようにすることが、この原状回復の案件の絶対条件となります。
ではこの「ペット可」のデメリットをどうすればよいのでしょうか。
ペット専用に建てた物件でない場合には、最初からペットに耐えうる工夫をしていくことが重要です。
フローリングの物件では、その上にペット専用のクッションフロアを敷くのも一考です。
そもそも「傷つけられる」ということを前提に、決めていきましょう。
通常の原状回復と同様にリフォームしてしまうと、費用ばかりかかってしまいます。
一棟所有の場合には、賃借人のために「ペットのしつけ教室」を定期的に行うことも有益かもしれません。
今回は話し合いで解決出来ましたが、年々ペットがらみの原状回復トラブルは増加していますので注意が必要です。

家賃滞納・立ち退きトラブル解決事例

「信頼関係の破壊」の証明が契約解除に必要(3ヶ月程度の滞納が目安)

賃貸借契約の終了について2つのテーマ、家賃の滞納と立ち退きについてお伝えします。
まずは家賃滞納について、例えば、賃借人が2ヶ月滞納していて、契約書には滞納が2ヶ月分になった場合に契約解除できると書いてあるがどうしたらいいかというケースで考えます。
結論としては契約書に記載していても賃借人への保護が厚いため即刻解除が出来ないケースがほとんどです。
滞納への対処に関して、滞納発生時から5年で債務が消える消滅時効を止めるにはどうすればよいかという相談があります。
その場合、まずは「支払いの催告」を行いましょう。
催促状や請求書といった書面を送ります。
ただ、こうした書面を送り続けても裁判を起こして請求しない限り時効は止まりません。
裁判以外の方法としては、「債務の承認」、つまり分割合意書を作成して未払い賃料の支払い債務を認めさせることで時効を止めることができます。
また、未払い賃料の一部を支払ってもらうという方法もあります。
賃料支払いの催告についてですが、賃料回収を目的にする場合と、とにかく明け渡しを要求したい場合どちらも行います。
後者は、裁判で有効になる可能性が高くなります。
賃借人にチャンスを与えても改善されなかったという事実が考慮されるからです。
分割合意書は念書、確約書などタイトルはなんでも構いません。
重要なのは中身で、必ず未払い賃料の金額や、1ヶ月いくら支払うのかといった分割の方法を書いておくことです。
最後に約束を破ったときにどうするかを忘れずに記載しておきましょう。
記載がないと支払いが滞ったときに一括請求やペナルティを与えることができなくなる可能性が出てくるからです。
それでも賃料の支払いが進まない場合、裁判を起こすことを考えていきます。
裁判となると解決までに時間がかかります。
強制執行が行われるまでスムーズにいっても3ヶ月半~4ヶ月半くらいが目安となります。
そもそも裁判を起こすのに最少で3ヶ月分の滞納があるので最低でも合計6ヶ月半~7か月ほどの家賃ロスが発生することになるため早めの裁判が必要になります。
多くの方に聞かれるのが立ち退き料はいくら支払えば良いのかということです。
裁判所は、さまざまな要素を加味して決定します。
年齢、経歴、職業、資産状況、健康状態、家族関係、建物の状態、近隣状況、愛着度などを考慮します。
重要なのは移転費用の保証(仲介手数料、引っ越し代金等)、営業目的の場合、店舗を閉めるにあたって発生する売り上げの損失の保証、そして借家権の保証です。
居住用の立ち退き料の相場は、裁判の場合、100万円~500万円くらいの幅で200万円~300万円が多いですが、裁判を行う前に、弁護士による立ち退き交渉を行うことが多いです。
6ヶ月程度の立ち退き料を基準に交渉を進めます。
なお管理会社や施工会社などが家主からの対価を得て立ち退き交渉を行うことは弁護士法違反となります。