防火管理者とは
消防設備や火気設備等の点検、整備のできる管理的または監督的な地位にあり、法令の定める講習を受講した人を指します。
学校・病院・工場・オフィス・商業施設・共同住宅など不特定多数の人が利用する建物・施設において、火災による被害を防止するため、消防計画の作成、消防用設備の維持管理、消火・避難訓練の実施など、防火管理上必要な業務を行う責任者を言います。
防火管理者を選任しなければならない防火対象物の規定とは
(1)火災発生時に自力で避難することが著しく困難な者が入所する社会福祉施設等を含む防火対象物のうち、全体の収容人員が10人以上のもの。
(2)劇場・飲食店・店舗・ホテル・病院など不特定多数の人が出入りする用途(特定用途)がある物を「特定用途の防火対象物」といい、そのうち、防火対象物全体の収容人員が30人以上のもの。
(3)共同住宅・学校・工場・倉庫・事務所などの用途(非特定用途)のみがある物を「非特定用途の防火対象物」といい、そのうち、防火対象物全体の収容人員が50人以上のもの。
(4)新築工事中の建築物で収容人員が50人以上のもので、総務省令で定めるもの。
(5)建造中の旅客線で収容人員が50人以上のもの、総務省令で定めるもの等となります。
規定では50人以上というのがひとつの区切りとなり50人未満は防火管理者の選任は不要となります。
また、対象物の規模により「甲種防火対象物」「乙種防火対象物」と区分され、甲種防火対象物(延べ面積500㎡以上)には甲種防火管理講習の課程を修了した者を、乙種防火対象物(50人以上延べ面積500㎡未満)には、乙種、または甲種の課程を修了した者を選任します。
防火対象物の収容人員の算定方法は、従業員の数・居住者の数。
劇場・飲食店等は、イスの数。
店舗等は、面積4㎡ごとに1人、事務所等は、面積3㎡ごとに1人となります。
防火管理者の責任は重大です。
防火管理者が適正な管理業務を行わず火災等により死傷者が出た場合、管理責任者として責任を追及され、悪質な場合逮捕まであります。
2001年の歌舞伎町ビル火災では東京消防庁の再三の改善指導に全く従わず、設備の管理・点検や客の避難誘導などの業務を怠り2人が死亡、5人が負傷し、業務上過失致死傷罪にあたり6人が逮捕されています。
また09年の高円寺の居酒屋火災では消化器や自火報(熱感知器)を故障したまま長期放置し、避難口は物品が置かれ従業員も普段から非難誘導訓練をせず、火災発生時に非常口を使って避難できず、これによって客と従業員4人が一酸化炭素中毒で死亡しました。
防火設備の不備を知りながら対策を放置していたことから悪質とみて、ビル所有者と防火管理者、店の経営者の計3人が業務上過失致死傷容疑で逮捕されています。
後日東京地方裁判所の判決では、店の経営者は禁錮2年6ヶ月執行猶予5年、ビル所有者、ビルの統括防火管理者もそれぞれ禁固刑、執行猶予の判決を受けています。
防火管理者は火災の発生を予防し、それを推進する責任者であることを絶対に忘れてはいけません。