賃貸事業に必要な「賠償責任保険」

賃貸物件で発生する事故の中で、とりわけ解決が困難なのが賠償事故です。
その原因が建物に起因するものであれば、家主はいや応なしに被害者へ損害賠償しなければなりません。
そしてそれが人の身体にかかわる傷害事故だったら・・・。
場合によっては、漏水事故とは比較にならないほどの高額賠償になる可能性もあります。
そのような事故に備える「損害賠償保険」とはどんな保険なのか、管理の現場でも理解を深める必要があるのではないでしょうか。

賠償責任保険とはどんなものか

賃貸物件は、居住空間を提供する公共性の高い施設です。
住民だけでなく、そこを訪れる人、近隣に暮らす人など、周囲にはたくさんの人々の生活があります。
賃貸物件に起因して何らかの事故が発生し、これらの人々の身体や財産に危害を加えてしまったら、家主は全責任を負わなければなりません。
このような施設で発生する偶然な事故によって、所有者が負わなければならない法律上の賠償費用を補償するのが「施設所有(管理)者賠償責任保険」です。
通常、対人賠償、対物賠償それぞれの賠償限度額と免責金額を設定し、必要な特約を選んで付帯します。
集合住宅には必須の漏水被害の事故、エレベーターなどの昇降機に起因する事故はオプションとなっているため、補償に漏れがないか注意する必要があります。
また、火災保険の特約として付帯されることもあり、「施設賠償責任特約」「建物管理者賠償責任特約」「賃貸建物所有者賠償特約」など、保険会社、保険商品によって名称が異なります。
特約で付帯されている場合は、漏水事故や昇降機の事故も自動的に補償されるので、補償の漏れは起きづらく安心です。

法律上の損害賠償責任とは何を指す?

すべての賠償責任保険約款における、保険金の支払い要件は「第三者に対して法律上の損害賠償責任を負った場合」とされています。
つまり、保険で補償されるか否かは法律の判断に委ねられるということなのです。
ですから主観的に自分に責任があると思っていても、実は法的には責任を負わなくてもいいというケースでは、賠償責任保険で補償することはできません。
それでは家主に法律上の損害賠償責任が発生しないケースとはどんな場合でしょうか。
①大型台風の通過に伴い、強風でアパート付属の駐車場のトタン屋根が剥がれて飛ばされ、隣家の窓ガラスに衝突して破損させた。
②アパートの周辺で落雷があり、コンセントからの過電流の発生により入居者の家電製品が破損した。
③アパートの屋根に積もった雪の塊が凍結して落下、隣家の乗用車の屋根を破損させた。
これらはいずれも自然災害による被害であるため、家主として必要な注意義務を怠っていた場合を除いて不可抗力による損害となり、法律上の損害賠償が発生しない可能性があります。
その場合、家主の損害賠償保険ではなく、被害者が自らの費用負担において復旧する、または被害者が加入している火災保険、家財保険、車両保険などによって復旧費用を捻出しなければなりません。
何となく加害事故のようだからと、被害者との間で保険による損害賠償の口約束などをしてしまうことのないように、十分注意しましょう。

※全国賃貸住宅新聞より引用