相続対策の三原則は、遺産分割対策、納税資金対策、節税対策です。
一番優先すべきは遺産分割、次に納税資金、その次が節税です。

相続対策の三原則とは?

相続対策には、遺産分割対策、納税資金対策、節税対策の三原則があります。
遺産分割対策は、「相続」が「争族」にならないように財産を相続人にスムーズに承継させる対策です。
納税資金対策は、相続税をスムーズに納税するための対策です。
節税対策は、相続税の納税額を下げるために行うもので、財産の評価を引き下げる対策と、親族への贈与により財産を減少させる対策の2つからなります。

相続税対策の優先順位

相続対策の三原則には優先順位があり、最優先すべきなのは遺産分割対策です。
次に重要なのは納税資金対策であり、これらを織り込んだうえで節税対策を行うべきです。
遺産分割対策を最優先の対策とするのは、遺産を巡って相続人間で争いが起きると、税金その他さまざまな面でデメリットが生じるためです。
遺産分割がまとまらない場合は、相続後の相続人の資金繰りを考えるうえで極めて不利となります。
例えば遺産分割協議中は、預貯金の払い戻しや有価証券や不動産の売却ができず、葬儀費用や納税資金を捻出できなくなるおそれがあります。
次に税務上のデメリットもあります。
遺産分割がまとまらない場合であっても、相続税の納税は待ってもらえません。
相続税の申告期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内)までに相続人が法定相続分で遺産を取得したとして税務署にいったん申告と納税を済ませる必要があります。
納税資金対策の面から考えても、遺産分割でもめることは得策ではありません。
さらに相続税の計算上、課税対象額や税額が軽減される「小規模宅地等の減額特例」や「配偶者の税額軽減」は、遺産が分割されないうちは適用が受けられません。
もちろん、相続争いに費やす時間や精神的な負担も大きなデメリットとなります。
スムーズな遺産分割対策の次に優先すべきなのは、相続税の納税資金対策です。
相続税は申告期限までに現金で納めるのが原則です。
相続財産に現金が少ない場合、相続財産を売却して相続税を納めることになりますが、相続財産の多くが簡単に売却できない不動産などの場合、納税が極めて困難になります。
相続税の節税対策も重要ですが、相続開始前の相続税の納税資金の準備が大切になります。

財産を相続人にスムーズに承継できるよう、財産を管理処分しやすいようにした上で、承継者を明確にしておきます。

遺産分割対策とは?

遺産分割対策は、財産を相続人にスムーズに承継させる対策です。
遺産分割対策においては、「相続」が「争族」にならないようにすることが大切です。
このため、財産を受け継ぐ相続人にとって管理・処分しやすいようにした上で、誰にどの財産を引き継ぐのかを明確にしておくことが必要です。
また、スムーズな遺産分割を念頭におくのであれば、所有財産のうち不要なものは極力換金しておき、相続人が分けやすい預貯金に換えておくことも重要です。

遺言の作成による遺産分割対策

相続財産のなかには、不動産のように相続人の間で均等に分けることができないものがあります。
複数の相続人で土地や建物を共有で相続することは可能ですが、相続人の置かれる経済的な状況が変わってくると、土地を売却して換金したい相続人と、保有を継続したい相続人との間でトラブルになるおそれもあります。
このような遺産分割をめぐるトラブルを避けるため、あらかじめ「遺言」を作成し、誰がどの不動産(財産)を相続するかを指定しておくことが効果的です。
遺言を作成する場合に注意しないといけないのは、次の2点です。

①相続人(特に子)には極力、公平に財産をわたすこと

民法では、「遺留分」という、兄弟姉妹以外の相続人が被相続人から相続財産を取得できる最低限の権利を保障しています。
相続人は、相続による自分の取り分が遺留分よりも少なければ、遺留分減殺請求によって、相続財産を取り戻すことができます。
ただし、相続人間でこれを実行すれば、信頼関係が崩れてしまうかもしれません。
相続で不幸な結末を迎えないためにも、遺言の作成の際には全相続人の遺留分を確保する内容とすべきです。

②遺言執行者を指定すること

遺言では、その内容を実現する遺言執行者を指定しておきます。
遺言執行者は遺言を作成した人の相続人でもなれますが、遺言の内容に利害関係のある相続人を避け、信託銀行などの第三者を遺言執行者として指定する事例も増えています。

201604-3