【調査】地方のオフィス市場、東京ほど悪化せず

新型コロナウイルス感染拡大に伴うテレワークの普及などによって東京のオフィス市場が苦戦を強いられるなか、相対的に堅調な地方都市に注目が集まっている。
2021年8月下旬、みずほ信託銀行系のシンクタンクである都市未来研究所とニッセイ基礎研究所がレポートを相次いで発表した。
都市未来研究所は「不動産トピックス2021年8月号『主要都市の賃貸オフィス市場の現状と今後の見通し』ほか」を発表。
東京の平均募集賃料が感染拡大以降、大幅に下落する一方で、地方主要5都市(札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡)はおおむね横ばいもしくは上昇を続けていると指摘した。
その理由として、これらの都市では東京に比べてテレワークの実施率が低い水準にあることを挙げる。
加えて、シェアオフィスなどの開業が地方都市で続いていることも、賃貸市場の需要を下支えしているとした。
ただし、上記5都市では2021年〜2023年に賃貸オフィスビルの年平均新規供給量が過去10年間の年平均より多くなる見込みで、これを吸収できる需要がないと受給バランスが悪化する恐れがあるとみる。
一方、ニッセイ基礎研は「不動産投資レポート『不動産投資の観点でみる地方都市の特性評価〜市場規模と流動性に着目し、都市の特性を分類』」で、最近は地方都市に特化したファンドが複数組成されていると指摘。
「リスク分散と収益安定化をめざし、今後も地方都市への投資拡大が予想される」とした。
そのうえで地方10都市(前出の5都市と川崎、横浜、京都、神戸、広島におけるオフィス市場の規模と流動性を分析。
その結果、市場規模(投資適合不動産のストック量)は大阪が6兆4000億円で1位。
2位の名古屋(2兆2000億円)や3位の横浜(2兆1000億円)を大きく引き離した。
市場流動性(市場規模に対する平均年間取引額の比率)は横浜が5.8%で1位となり、川崎の3.2%と大阪の2.9%が続いた。

【売買】博多のオフィスビルを取得、福岡リート

福岡リート投資法人は2022年3月1日、福岡市博多区のヤマエ博多駅南ビルを取得する。
価格は43億2000万円。
売り主は食品商社のヤマエ久野だ。
ビルは、JR博多駅筑紫口から徒歩8分の場所にある。
ホテルや官公庁も集積するオフィス街の一角だ。
地上8階地下1階建て、延べ床面積8621㎡の規模で、1992年に竣工した。
売り主グループのほか、ダイコク電機、インフォコム、富士通Japanソリューションズ九州など12テナントが入居している。
なお、売り主は売却後も引き続きビルを利用する。
鑑定評価上のNOIは2億2949万円で、取得価格に対する利回りは5.3%になる。
投資法人は取得後、ビル名称を博多筑紫通りセンタービルに変更する予定だ。
今回の取引によって、投資法人の運用資産は、取得価格ベースで2063億円3900万円になる。

【売却の概要】

名称 ヤマエ博多駅南ビル(取得後、博多筑紫通りセンタービルに改称予定)
買い主 福岡リート投資法人
売り主 ヤマエ久野
価格 43億2000万円
所在地 福岡市博多区博多駅南2-1-9(住居表示)、2-5ほか(地番)
最寄り駅 JR博多駅徒歩8分
面積 土地1333.68㎡、延べ床8621.96㎡、賃貸可能床5994.41㎡
構造 SRC・RC造
階数 地上8階、地下1階
用途 事務所、店舗
用途地域 商業
容積率 600%、500%(法定)
竣工 1992年
取引時期 2021年8月(契約)、2022年3月(引渡)
取引形態 信託受益権
利回り 5.3%(鑑定NOI/価格)

【開発】福岡の地下鉄新駅近くにホテル、西日本鉄道

西日本鉄道は2021年9月、福岡市博多区祇園町でホテル開発に着手する。
同社が展開するCROOM(クルーム)ブランドのホテルで、地上13階建て、延べ床面積8006㎡の規模。
ダブルルームからフォースルームまで275室を備え、1階には大浴場を設ける。
設計は安藤ハザマ。
2023年春の開業をめざす。
建設地は地下鉄祇園駅から徒歩7分、JR博多駅からは徒歩10分の、はかた駅前通り沿いにある。
大型商業施設のキャナルシティ博多に近く、2022年度には地下鉄新駅の櫛田神社前駅が、目の前で開業する予定となっている。
土地1595㎡は借地で、容積率400%と500%の商業地域が指定されている。
この場所には、かつて結婚式場のアーフェリーク迎賓館(博多)が建っていたが、日本商業開発が2017年7月に取得し更地にした。
西日本鉄道は2019年10月に同地に賃借権を設定していた。
土地はその後、エムエル・エステート(本社:港区)の所有を経て、JA三井リース建物(本社:東京都中央区)が2020年4月に取得している。

【開発の概要】

開発名 西鉄ホテルクルーム博多祇園(仮称)
所在地 福岡市博多区祇園町6-29(旧住居表示)、422ほか(地番)
面積 土地1595.56㎡(借地)、延べ床8006.31㎡
構造 RC造
階数 地上13階、地下0階
用途 ホテル
客室数 275
用途地域 商業
容積率 400%、500%(法定)
事業主 西日本鉄道
設計者 安藤ハザマ
工期 2021年9月〜2023年春
※日経不動産マーケット情報より引用