単身高齢者、急増50年に1000万世帯超
2025年10月1日に施行される改正住宅セーフネット法は、「オーナーの不安軽減策」「見守り機能付き住宅の供給」「地域と福祉との連携強化」の大きく三つの柱を整備し、要配慮者の受け入れ促進を図る。
※国交省公表資料を基に全国賃貸住宅新聞で作成
法改正の背景には、増加する単身高齢者世帯による賃貸住宅ニーズの高まりがある。
全国の単身高齢者世帯数は、20年時点で738万世帯。
50年には1084万世帯まで増加すると想定され、全世帯の半数に迫る勢いだ。
一方で、「令和5年住宅・土地統計調査」によると、賃貸住宅のうち空き家となっている物件が約443万戸あることがわかっている。
国土交通省は、空き家にも関わらず単身高齢者の受け入れが進まない原因の一つに、単身高齢者が抱える孤独死や死亡後の残置物処理などの入居後のリスクが考えられるとみる。
※国交省公表資料を基に全国賃貸住宅新聞で作成
入居後をサポート 10年で10万戸目標
国交省が改正法の肝だと話すのが、入居後の見守り機能を兼ね備えた「居住サポート住宅」の創設だ。
同住宅は、改正法施行から10年で10万戸の供給を目指す。
居住支援法人などが入居者となる要配慮者の見守りを担うことで、オーナーが抱えるリスクを軽減する。
具体的には、空室や空き家を所有するオーナーと居住支援法人が連携し、居住サポート住宅として登録を行う。
登録には、国が定めた認定基準に適合することが求められ、認定の判断は市区町村長が担う。n
なお、福祉事務所が設置された市区町村に限る。
詳細の認定基準は現在検討中だが、部屋単位ではなく物件ごとで認定を得る仕組みになる。
1棟あたりの登録戸数に制限は設けないが、最低1戸以上は要配慮者を受け入れる専用住宅とすることを想定する。
民間賃貸住宅のほかに、公営住宅の目的外使用による登録も可能だ。
見守り機能については、ICT(情報通信技術)による安否の確認と、居住支援法人などによる訪問の二つを実施する。
安否確認は1日1回以上、訪問は月1回以上を最低基準に定める方針だ。
二つの見守りを通じ、要配慮者の生活や心身状態を把握。
何が起こった際に居住支援法人が地域の福祉サービスにつなぐ役割を担うことで、孤独死や家賃滞納などのリスクを回避する狙いだ。
国交省住宅局安心居住推進課の担当者は『つなぐ』という役割の具体例は、必要な福祉などの関係機関に連絡を促すことや同行すること、連絡が取れたかどうかを確認することを想定する」と話す。
つなぐ役割について、NPO法人抱樸は次のように語る。
「世帯の単進化が社会的に進むことで、従来、家族間で行なっていた見守りの役割を、社会が担う必要が生まれてきた。住宅の確保だけに困っている要配慮者はいない。『居住』支援とは、人とのつながりをサポートすることにある」
同法人は居住サポート住宅の供給に先駆けて、空き家をサブリースし、要配慮者への住宅提供と入居後の支援を行う独自の取り組みを行っている。
居住サポート住宅が普及していくためには、「見守りを担う居住支援法人の費用負担先の明確化が必要だ」と指摘した。
居住支援法人がビジネスとして成り立つ構造のはまだ不明点が残る。
「居住サポート住宅の供給開始の際は、事業モデルの提案ができたらと考えている」
今後、見守りを行う担い手を増やす体制の構築に、注目したい。