賃貸事業に必要な「賠償責任保険」

賠償責任保険で補償させるのは、加害者に何らかの法律上の賠償責任が発生した場合に限られます。
ところが加害者側に法律上の賠償責任があっても、保険約款上免責(補償されない)となる事故もあるのです。
それはどんなケースなのか。
理解していないと、トラブルになりやすい事例を挙げて解説します。

雨水のしみ込みや吹き込み保険約款では免責

建物の老朽化の進行に伴って発生が心配されるのが、「水漏れ」です。
建物の維持管理上の不備によって発生している限り、それにより入居者に被害が及べば、その責任は家主が負わなければなりません。
つまり「法律上の賠償責任」が発生するわけです。
ところが賠償責任保険で補償されるのは「給排水設備からの漏水による水ぬれ損害」に限られているので、いわゆる「雨漏り」「雨の吹き込み」は補償の対象にはなりません。
居室内に水漏れが発生して、入居者の家財などが汚損するという点では被害は同じですが、保険対応ができない事由もあり得るという認識を持ちましょう。
これは非常に誤解されやいことなので、慎重な対応が求められます。
水漏れの発生原因を、まずいち早く調査し、保険対応の可否を早期に判断する必要があります。
※一部の保険会社の損害責任保険商品では、「雨漏り」を有責(補償の対象)としているものもあります。

賠償責任保険が適用不可という事実を知り、修繕計画を作成

賠償責任保険で対応ができないケースが存在するということは、事故の発生を防がなければなりません。
特に注意を払ってもらいたいのが雨漏りの予防だと言えます。

【特に注意が必要な箇所】

  • 屋上の防水
  • バルコニーの防水
  • 共用廊下、外階段の防水
  • 小屋根
  • 軒裏
  • 外壁
  • 水回り
  • 窓枠のコーキング
  • 排気ダクト

いずれも老朽化によるひび割れ、隙間などが発生しやすく、雨漏り、雨水の吹き込みの原因となることが多いとされています。
そこで、賠償責任保険には保険約款上、補償の隙間が存在するという事実と雨漏りの危険性を、知っておく必要があります。
その上で、最も重要な箇所の修繕計画を作成してみてはいかがでしょうか。

排水溝の詰まりなど対象となるケースも

建物の老朽化が原因ではない「雨漏り」もないわけではありません。
屋上やバルコニーに暴風雨などによって飛来した物(ゴミ、落ち葉など)が排水溝を塞いでしまい、排水ができなくなったためにたまってしまった雨水が一気に居室内にあふれ出てしまった場合などがその例です。
この場合で賠償責任保険の対象となるには、居住者自身に過失がなかったことが要件となります。
専有使用部分であるバルコニーの清掃を著しく怠っていたことによって、排水溝の詰まりを引き起こしてしまった場合などでは、居住者に賠償責任が発生する可能性もあります。
また、排水溝の詰まりがあっても、屋上やバルコニーの防水機能が老朽化により著しく低下していた場合には、雨漏りと判断されるケースもあります。

賃貸併用住宅では家主の自宅からの漏水に注意

最上階などに家主の住まいがある「賃貸併用住宅」では、漏水の発生箇所によって施設賠償責任保険では補償されないことがあります。
賃貸物件に掛ける施設賠償責任保険で補償の対象となるのは、原則賃貸事業の遂行に関わる部分のみです。
よって家主が生活を営む部分が原因箇所である漏水事故では「個人賠償責任保険」の付帯がないと補償されない場合があります。
事業用と個人用、それぞれの賠償責任保険がどちらも必要である認識を持ちましょう。

※全国賃貸住宅新聞より引用